「無理なお願い」でも相手が快く動いてくれる〈依頼メール〉の文面【専門家がアドバイス】

「無理なお願い」でも相手が快く動いてくれる〈依頼メール〉の文面【専門家がアドバイス】
(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジネスメールの中でも特に作成頻度が高いのは「依頼メール」でしょう。仕事はお願いの繰り返しです。相手に快く動いてもらえる「依頼メール」を書くには、どうすればよいのでしょうか? 平野友朗氏の著書『コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

依頼メールの書き方を教えてください

仕事では、いろいろなメールを書きますが、日常で最も頻繁に書くのが依頼メールかもしれません。依頼のゴールは、相手が着実に実行に移してくれること。しかも依頼者の求めるスピード感で。頼まれて、嫌々ながら動くのと、快く動くのでは、仕事を円滑に進めるうえでは大きな差が出ます。仕事はお願いの繰り返しです。依頼は1回とは限りません。関係は続きます。だからこそ、依頼メールでは気持ちよく対応してもらえるように働きかけることが重要です。

 

しかし、受け取った相手を戸惑わせてしまう依頼メールが少なくありません。メールを読んで、次の1つでも頭をよぎれば、気持ちよく対応することはできないでしょう。

 

①なぜ私なのだろう

②いつまでにやるのだろう

③何をどうやってやるのだろう

 

それぞれに答えが示されなければ、動くことはできません。

 

依頼内容に関連している部署だから、データを持っているから、紹介してもらったから、一番詳しそうだから、適任だからなど、理由は必ずあります。それを伝えないと相手はわかりません。

 

期限も重要です。ほかにも仕事を抱えているので、期限が書かれていないと優先順位をつけられず、動きにくいこともあります。数分でできる作業や期限を委ねるものは、期限を伝える必要はありません。しかし、時間のかかる作業や後工程に影響があるものは、期限を設定して、スケジュール感を共有したほうがよいでしょう。

 

情報の抜けもれがあると、依頼どおりの作業をしてもらえない可能性があります。情報の欠落があれば、相手は知識や経験で補足して理解しようとします。その補足が間違っていたら正確には動けません。依頼に必要なのは「作業の目的」「作業の質」「作業の内容」です。

 

目的がわかったほうが、相手もプラスアルファを考えやすいでしょう。たとえば資料の作成を依頼する場合、その資料を社内会議で使うのか、社外プレゼンで使うのかによっても求められる質が変わります。過剰品質も低品質も時間を無駄にするので、求めるアウトプットの内容だけでなく質も伝えるようにします。

 

相手の経験値に合わせて作業手順も伝えます。相手が疑問や不快を抱くことなく正確に対応してくれることがゴールです。そのためには、相手に応じて伝え方を変えることが必要になるのです。

無理なお願いをするときに、どう書いたら動いてもらえますか

通常の依頼であれば、仕事なのでやってもらえるでしょう。しかし、相手に断る権利があるときや、無理を強いるときは、それ相応の依頼の仕方が求められます。人を動かすには、強い言葉を使った感情的なアプローチや、論理的なアプローチが有効です。

 

①強い言葉で依頼を受け入れてもらう(感情)

②事情を伝えて理解を求める(論理)

 

強い言葉は感情を揺さぶります。人間は感情の生き物でもあり、頼られることによって自己重要感を持ちます。「私は人の役に立っている」と思えるから、つらい仕事であっても頑張れるのでしょう。たとえば、次のような言葉が当てはまります。

 

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「〇〇さんにしかお願いできない内容です。なんとかご協力いただけませんか。」

 

「〇〇さんにご協力いただければ、きっと成功すると思います。なんとかお力添えをいただけませんか。」

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強い言葉は、毎回使うわけにはいきません。ここぞというときに使うから効果があります。いつでも誰にでも使っていれば「言葉が軽い」と思われます。使うタイミングや回数には注意しましょう。

 

別の視点では、相手の理性に訴えます。筋道を立てて伝えて、感情に左右されず、判断してもらいます。「そのような事情だったら仕方がない」と思ってもらわなければなりません。「お手数をおかけして恐縮ですが、ご対応のほどお願いいたします」ならば、通常の依頼と同じです。無理な要求をしていることを自覚していないようにも映ります。それが、次のように事情を伝えたら、どうでしょうか。

 

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「私の認識不足で、納期を1日短く見積もってしまいました。資料の作成をお手伝いいただけないでしょうか。」

 

「今回の案件は何としても成功させたいと考えております。〇〇様のお力をお貸しいただけないでしょうか。」

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事情を伝えて、相手が「それは重要だ」「力になりたい」と思ったら、優先順位を上げて力を貸してくれるでしょう。

 

論理的にアプローチするならば、どの程度困っているのか、会社や組織にとってどの程度重要なのか、無理を受け入れることにどんなメリットがあるのか、説明が求められます。

 

①と②は相反するアプローチのように見えますが、表裏一体となって物事を進めます。方法に絶対の正解はありません。相手を動かすために必要なのは何か。それを考えて判断します。

 

 

平野 友朗

一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役

 

1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学を専攻。広告代理店勤務を経て、独立。2004年、アイ・コミュニケーションを設立。2013年、一般社団法人日本ビジネスメール協会を設立。ビジネスメール教育の専門家。メールのスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールコミュニケーションの効率化や時間短縮による業務改善など、支援実績は多岐にわたる。

著書は『そのまま使える! ビジネスメール文例大全』(ナツメ社)、『仕事ができる人は実践している! ビジネスメール最速時短術』(日経BP)など、本書を含め35冊。

 

※本連載は、平野友朗氏の著書『コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則

コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則

平野 友朗

日本能率協会マネジメントセンター

在宅勤務やテレワークで、「コミュニケーションのあり方」と「メールの量」が変わってきました。今までは口頭で済んでいた報告・連絡・相談の多くが、メールに切り替わったため、「大量のメールが来るようになった」「部下の仕…

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