(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジネスメールでは、不快感を与えないよう慎重になるあまり過剰なほど丁寧になってしまったり、それゆえに文章が膨らんで読みにくくなったりすることも珍しくありません。すっきりと読みやすく、失礼のないメールを書くにはどうすればよいのでしょうか? 平野友朗氏の著書『コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

「メールが丁寧すぎだ」と言われますが、改善策はありますか

メールが丁寧であることは、決して悪いことではありません。丁寧さは配慮や気遣いの表れだからです。配慮を示すことによって、尊敬や感謝を表すことができます。仕事を円滑に進めるためにも、丁寧なメールを書く意味があります。

 

ただし、丁寧さは、相手の求めている度合いを超えれば、不要なものになります。度が過ぎると指摘をされるなら、何かしらの改善が必要です。相手が「メールが丁寧すぎる」と指摘してきたのは、次の理由が考えられます。

 

文字量が増えるため読みにくいと感じている

過剰な配慮が不自然で不快感を覚えている

メールに時間をかけるなら別の仕事をやってほしいと思っている

丁寧さは非効率だから不要だと考えている

 

指摘の背景を想像すると対策も考えやすくなります。それぞれ順番に見ていきましょう。

 

文字量が増えるため読みにくいと感じさせているなら、文字量を減らしてシンプルな言い回しをすること。「こちらの都合で大変恐縮ではございますが、何卒ご対応いただきますよう謹んでお願い申し上げます」も「大変お手数ですが、ご対応のほどよろしくお願いいたします」と書き換えればすっきりします。

 

過剰な配慮が不自然で不快感を与えるのは、場面に合っていない言い回しが原因です。どんなに丁寧な表現でも、場面に合っていなければわざとらしさを含み、不快にさせる危険があると心得ましょう。

 

メールに時間をかけるなら別の仕事をやってほしいと思われるのは、部下が、上司の求める時間や質を理解していません。スピード化に取り組む必要があります。過剰な丁寧さがなくなると、言葉は減り、当然、入力時間も減ります。言い回しがシンプルになるため、文章を考える時間を減らすことにもつながります。

 

丁寧さは非効率だから不要だと考えるかは、仕事に向き合う姿勢によります。「メールに丁寧さは不要だ」と考えている相手には、過剰でなくても、普通の丁寧さでも嫌がられることがあります。求めていないとわかっている相手には丁寧さを極力排除するなど、バランスをとりましょう。丁寧すぎると感じる程度には個人差があります。好みもあるでしょう。

 

わからないときは、具体的にどのような点が丁寧すぎるのかを確認したうえで、改善することも必要です。

「させていただきます」を使いすぎないようにしたいです

「させていただく」は使い勝手がいい言葉のため、丁寧さを示すために、ついつい多用してしまうことがあります。「させていただく」というのは本来、相手に許可をもらって何かを行い、恩恵を受けるときに使う、という意見もあります。しかし、言葉というのは時代に応じて変わるもの。『三省堂国語辞典(第八版)』によると次のような説明があります。

 

①許しをもらってするときの、けんそんした言い方

②許しをもらってするかのように、自分の行為をけんそんする言い方

③思いどおりにするとき、うわべだけ礼儀を示した言い方

 

許可をとって行い、恩恵を受けるとき以外に使っても間違いというわけではないようです。上記によれば「中止させていただきます」「運行を停止させていただきます」のような言葉も不適切とはいえないのです。「させていただく」という言葉は使える場面が増えた結果、使いすぎてしまい、文章のリズムを壊してしまうことがあります。たとえば、次のような文章はどうでしょうか。

 

「こちらで確認させていただき、連絡させていただきます。」

 

1つの文の中に「させていただく」が2つ以上あると過剰に感じる人もいるでしょう。「させていただく」が多いと感じたときは省略するか、「いたします」にするなど調整します。

 

「こちらで確認し、連絡させていただきます。」

「こちらで確認させていただき、連絡いたします。」

 

 

「こちらで確認させていただき、連絡させていただきます」という文は、1文の中に「確認する」と「連絡する」の2つの動作が入っていますが、相手に許可をとって行うことではありません。書き手が勝手にする動作なので「確認して、連絡します」と書いても失礼ではないでしょう。謙遜の意味を添えるならば、相手あっての動作となる「連絡」につけるのが適当だといえます。「こちらで確認させていただき、連絡いたします」よりは「こちらで確認し、連絡させていただきます」のほうが、より自然な感じがします。

 

1文に「させていただく」は1つまでとしましょう。1つのメールに「させていただく」が何個も出てくると過剰な印象を与え、読みにくくもなります。「連絡します」「連絡いたします」「ご連絡します」「ご連絡いたします」などを使い分ければ、過剰な丁寧さを軽減することができます。「させていただく」をどこに入れると効果的なのかを考えると、違和感を与えない箇所が見えてきます。

 

 

平野 友朗

一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役

 

1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学を専攻。広告代理店勤務を経て、独立。2004年、アイ・コミュニケーションを設立。2013年、一般社団法人日本ビジネスメール協会を設立。ビジネスメール教育の専門家。メールのスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールコミュニケーションの効率化や時間短縮による業務改善など、支援実績は多岐にわたる。

著書は『そのまま使える! ビジネスメール文例大全』(ナツメ社)、『仕事ができる人は実践している! ビジネスメール最速時短術』(日経BP)など、本書を含め35冊。

※本連載は、平野友朗氏の著書『コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則

コミュニケーションに失敗しないための ビジネスメールの書き方100の法則

平野 友朗

日本能率協会マネジメントセンター

在宅勤務やテレワークで、「コミュニケーションのあり方」と「メールの量」が変わってきました。今までは口頭で済んでいた報告・連絡・相談の多くが、メールに切り替わったため、「大量のメールが来るようになった」「部下の仕…

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