為替のプロが「いつ円安阻止が起きてもおかしくない」と感じた“財務大臣のひと言”【7月の米ドル/円予想レンジ】

7月の「FX投資戦略ポイント」

為替のプロが「いつ円安阻止が起きてもおかしくない」と感じた“財務大臣のひと言”【7月の米ドル/円予想レンジ】
(※画像はイメージです/PIXTA)

3月末に「1ドル130円割れ」を記録した米ドル/円ですが、その後は一転、足元では145円近辺まで円安が進んでいます。こうしたなか、市場では「日銀による円安阻止介入の可能性」に注目が集まっています。そこで、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、要人の発言やさまざまな指標を分析し、7月の米ドル/円の行方を予想します。

今月の注目点…7月FOMC、円安阻止介入など

7月は月末に日米欧の金融政策決定会合が予定されています。とくに、6月の会合で利上げを見送ったFOMCでしたが、7月は改めて0.25%の利上げを行う可能性が高いと、今のところ見られています。

 

そんなFOMCをにらみながら、「米金利上昇=米ドル高」がどこまで続くかが、当面の最大の焦点と言えるでしょう。

 

ただし、米ドル/円自体徐々に上がりにくくなってきた可能性はあります。そのなかで、

 

①日本の通貨当局による円安阻止介入の可能性が出てきた

②循環的な円の「売られ過ぎ」、「下がり過ぎ」の懸念が強まってきた

 

といった2つの理由について以下で確認したいと思います。

 

①円安阻止介入の可能性

米ドル/円が145円程度まで上昇してきたことで、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を2割超上回ってきました。同じように、米ドル/円が5年MAを2割超上回ったのは、1990年以降ではこれまで3回あり、うち2回は円安阻止の米ドル売り・円買い介入が行われました(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

鈴木財務相は30日、「足元で政策課題になっているのは物価高騰対策であり、そういった政策課題からすると今の状況(円安)は良くない」と発言しました。こういった政府の考え方と、上述のような5年MAとの関係などからすると、いつ円安阻止介入が行われてもおかしくない状況にあるのではないでしょうか。

 

②循環的円安の「行き過ぎ」

米ドル/円は、3月末の129円台から約3ヵ月で15円程度もほぼ一本調子で上昇してきました。こういったなかで、さすがに循環的には円の「売られ過ぎ」、「下がり過ぎ」といった懸念も徐々に出てきています。

 

たとえば、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、先週にかけて売り越しが11万枚まで拡大しました(図表7参照)。これは、経験的には円の「売られ過ぎ」懸念が強くなってきた可能性を示すものです。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2010年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

米ドル/円の90日MAかい離率は、足元でプラス6%程度まで拡大しました。これで見ると、まだ短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いというほどではなさそうです(図表8参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表8]米ドル/円の90日MAかい離率(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ただ、たとえばメキシコペソ/円の90日MAはプラス10%以上に拡大するなど、米ドル以外の通貨に対する円相場、クロス円の一部は短期的な円安の「行き過ぎ」懸念が強くなってきました(図表9参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表9]メキシコペソ/円の90日MAかい離率(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

これまで見てきたことからすると、7月は米金利上昇に連れる形で米ドル/円が続伸する可能性があるものの、一方で日本の通貨当局による円安阻止介入や、円安自体の循環的な「行き過ぎ」懸念などから円高に反転する可能性もあると言えるのではないでしょうか。

 

以上を踏まえると、7月の米ドル/円は140~148円中心で円安、円高双方に荒い値動きになる展開を想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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