今回のような相談内容の論点
ご離婚の問題は、複数の論点が重なり、混乱されるご相談者様も少なくありません。今回のように、夫が離婚したいと考える理由を知っている場合には、感情的なところも相まって冷静に考えることは難しいと考えられます。
今回のご相談内容は、次のように整理できます。
(1)財産分与にあたり、配偶者の財産に不明瞭な部分がある場合の対応
(2)有責配偶者の財産分与における分与の割合の考え方
(3)(不貞)慰謝料請求の伴う離婚にあたっての段取りなど進め方
離婚の際の財産分与や慰謝料請求
1.財産分与にあたり、配偶者の財産に不明瞭な部分がある場合の対応について
(1)まず、財産分与について確認し、不明瞭な場合の対応について解説します。
財産分与とは、簡潔に言えば、ご離婚あたって、夫婦生活をしていくにあたって共有となっていた財産を清算してそれぞれに分けることです。
財産分与を検討するにあたっては、夫婦共有財産がどの程度あるのか、分与するにあたって割合をどうするのかが論点となります。夫婦共有財産がどの程度あるのか、については、基準時と評価額、財産についての各資料が問題となります。
(2)基準時については、別居を伴う場合には、別居開始時点と考えることが多いです。
本件では、夫の抵抗に耐えかねて別居となった場合には、その時点を基準とすることとなると考えられます。
(3)評価額については、夫婦で共通認識が取れればよいですが、取れない場合には、根拠資料が必要になります。
例えば、ご自宅が持ち家の場合、固定資産税評価証明書から評価額、住宅ローンがある場合には金融機関の債務残額の分かる資料が必要となります。
本件でも、夫の財産を調査するにあたり、せめてとっかかりとなるような情報についてはご相談者において把握しておきたいところです。
(4)財産資料について、配偶者が開示しない場合には、あると主張する側において調査する必要があります。
別居を開始しており、配偶者の財産がない事案で、かつ配偶者が財産資料を開示しない場合には、配偶者の財産を把握することが非常に困難になるケースが少なくありません。
本件でも、夫の財産を調査するにあたり、せめてとっかかりとなるような資料についてはご相談者において取得しておきたいところです。
2.有責配偶者の財産分与における割合の考え方について
(1)財産分与の割合について、2分の1ずつが基本的な考え方となります。それは、財産分与が離婚の場面での夫婦共有財産の清算のための制度となるためです。
離婚についての有責性は、財産分与ではなく、慰謝料の金額の中で考慮されるべき事情となります。そのため、本件でも2分の1ずつとすることが基本的な考え方となります。
(2)もっとも、財産分与については、大きく分けると3種類に分けて考えることができます。①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与です。
このうち、③慰謝料的財産分与の観点で考慮することもあり得ますので、この場合には、先の2分の1ずつを傾けるための事情として主張することも考えられます。
本件でも同様に、慰謝料的財産分与として配偶者の不貞の事情を考慮する場合には、2分の1ずつの考え方を傾けることはあり得ますが、放棄の主張までを通すことは少々ハードルが高くなります。
(3)また、2分の1ずつという基本的な考え方は、夫婦で話し合いをする中で傾けることは可能です。
本件でも、配偶者が自身の有責性を認め、財産分与の中で考慮する場合には、2分の1ずつの考え方を傾けることが可能となります。