ドロ沼化した国際結婚で外国人側が八方塞がりに
相談者のアザラシさん(男性・仮名)は2007年から約15年間、 日本に滞在していた27歳の韓国人です。
親と家族ビザで来日し、日本の中学・高校を卒業しました。アルバイトなどでお金を貯めて世界中を巡ったり、投資の勉強をしたりしながら、見聞を深めていきました。
そんな時に出会ったのが今の奥様です。結婚し、子供ももうけ、配偶者ビザに。
日本で起業もして、会社の代表になっています。
会社も夫婦生活も順調でしたが、あるとき、妻が相談者に隠れてパパ活していることが発覚し状況が一変します。もともと奥様はお金遣いが荒く、そのことで何度も衝突しましたが、我慢してきました。
しかし、何度言ってもいうことを聞いてもらえず、とうとう激しい言い争いに。
激昂した奥様が相談者にナイフを突きつけ、「出ていって!」と恫喝する事態にまで発展してしまいます。
自宅の世帯主は、配偶者の奥様。相談者が日本人ではないためです。言い争いはもはや夫婦喧嘩の域を超え、危ない状況でしたが、それでも相談者は抵抗せず、殴られ、噛まれるなどやられ放題で負傷も……。
ついには、警察沙汰にまでなってしまいます。
警察には詳しく状況を説明し、相談者に非がないことは理解してもらえたそうです。その上で、訴訟を提起することも提言されましたが、そこまではしませんでした。
それでもその後、同じように奥様が包丁を振り回し事件に。
結局、そのままでは命の危険もあるとして、相談者は家族と別々の暮らしを強いられることになりました。
一人で隔離される形になった相談者は、住民票や戸籍も取れないようにされ、奥様とお子様の居場所さえ掴めない状況。悪いのは奥様側なのに探すことも連絡さえもできない状況に、相談者は理不尽を感じ、次第に人間として奥様を見ることができなくなり、恐怖さえ感じたといいます。
引き離されてもう2年以上。
相談者は配偶者ビザを延期することもできず、仕事で海外出張があったものの、コロナで日本に戻ることもできなくなりました。
「いつまでもこのまま互いに放置するのもよくない。」相談者の中で、そんな思いがどんどん募っています。
相談者にとっては婚姻が継続されているため家族滞在ビザにもなれず、配偶者と連絡がとれないので配偶者ビザにもなれず、おまけに韓国には親戚が誰もいない状況。
相談者は在外国民のため、日本には住民登録証もなく、銀行も家も借りれず、電話番号すらつくれません。会社は存在しているものの、こんな状況なので当然、休眠状態です。
そこでアザラシさんは、複雑になりすぎた諸々の問題を解決し、なんとか人生をやり直したい一心で、ココナラ法律相談に辿り着き、「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)どのような手続きを踏めば日本に入国できるのか。その際、資産の整理や会社の清算なども行いたいが可能なのか。
(2)正式に離婚するためにはどんな手続きが必要か。その際の慰謝料や財産分与はどのようになるのか。
余裕を持ってビザの更新あるいは変更申請を
まず、質問(1)についてですが、前提として、今は配偶者ビザを更新できなかったということでしょうか。
もしそうであれば、一応再度配偶者ビザを申請するということが考えられますが、状況的に配偶者の方の協力が得られそうになく難しいかもしれません。
次に、自分の会社を日本で経営しているということですから、「経営・管理」のビザへの変更申請をすることが考えられます。
「経営・管理」ビザの活動範囲は、「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は事業の管理に従事する活動(法別表第一の二の表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営若しくは管理に従事する活動を除く)となります。
細かな要件や必要書類などが不明の場合には、弁護士にご相談ください。
さらに、離婚をした上ですが、定住者ビザを申請することも考えられます。
私が以前担当した案件で、日本人と婚姻していた外国人の方が、日本人配偶者が亡くなられたのちに定住者への在留資格変更を申請して、無事に変更できたという例がありました。婚姻生活を通して日本に定着していたと評価され、定住者としての実質があると判断されたのだと思います。
注意が必要なのは、どの在留資格もそうですが、日本で生活していけるという経済的な独立性は必要ですので、今回の相談ではあまり問題にならないかもしれませんが、配偶者に財政的に依存して生活していた場合には、離婚や配偶者の死亡後に、一人でも独立して経済的に生きていけるということを示すことが難しいということがあるかもしれません。
ただ定住者の在留資格が得られれば、日本人の配偶者等と同じように、どのような仕事に就くかという点について制限がありませんので、その点では「経営・管理」の在留資格より融通がきくと言えます。
改めて大学などに入って学生ビザを取得するということも選択肢としてはあり得ますが、この件ではあまり現実的ではないかもしれません。また高度の専門的な能力を有する人を対象とした高度専門職という在留資格もあることは一応指摘しておきたいと思います。