※画像はイメージです/PIXTA

出版社のM&Aは、事業承継を目的に行うケースはもちろん、業界での生き残り戦略としても有効です。積極的にM&Aに取り組むことで得られるメリットや、広がる可能性を見ていきましょう。買い手の目的や、実際に行われた出版社のM&A事例も紹介します。

3.中小出版社は苦境に立たされている

 

出版社の多くは中小規模で、売上高もそれほど高くありません。そのため今後の戦略としてデジタル化やコミックへの参入を望んでいても、資金不足から思うように身動きが取れない状況です。

 

3-1.出版社の多くが零細中小企業

 

『平成29年特定サービス産業実態調査報告書』によると、出版社は3,184社あります。そのうち従業員4人以下が1,498社、5~9人が870社と、全体の約74%が小規模な会社です。

 

知名度の高さの割に、規模の小さな会社が多いといえるでしょう。大手出版社が1,000億円規模の売上なのに対し、業界全体の平均売上高は約5億円です。この数字からも、中小出版社の苦しい状況が読み取れます。

 

参考:平成29年 特定サービス産業実態調査報告書 新聞業、出版業編

 

3-2.投資資金や技術がネック

 

大手出版社がデジタル化やコミックで新しいビジネスモデルに対応できているのは、十分な資金があるからです。資金があればデジタル化に必要な技術力のある人材を集め、使いやすいプラットフォームを開発できます。

 

自社で展開したプラットフォームによって、過去の作品を含めた大量のコミックを配信している出版社は、業績が堅調に推移しています。

 

一方、小規模な出版社では、投資資金を思うように確保できません。そのため技術力のある人材を集められず、デジタル化に対応するのが難しい状況です。

 

ネット上の記事は無料という風潮が強いため、自社メディアで有料記事を配信するとアクセスが極端に減ります。メディアの認知度が低下し、広告収入も途絶える可能性が出てくるでしょう。

 

4.出版社の事業承継の必要性

 

後継者不在や業界での生き残りが難しいという悩みを解消するには、事業承継が向いています。出版社の経営に携わりたいと考える後継者や、十分な資金力のある買い手に事業承継することで、今ある悩みが解決するはずです。

 

4-1.後継者不在に悩む経営者が多い

 

国内の中小企業の約6割には後継者がいません。経営者が高齢で引退間際であっても、会社を引き継ぐ相手がいないケースは多々あります。

 

後継者不在は、中小企業の出版社にも同じように起こっている問題です。子どもなどの親族を後継者とする親族内承継や、社内の人材へ引き継ぐ社内承継が難しいなら、M&Aによる第三者承継を検討しましょう

 

M&Aを活用した事業承継には、国がさまざまなサポートや税制優遇の制度を整えています。M&Aの実施件数が増え、制度が充実してきていることもあり、出版社の後継者不在を解消する方法としても注目されています。

 

参考:中小企業に注目される第三者承継。会社売却で得られるものとは

 

4-2.生き残りが難しい業界構造

 

書籍の売上が減っているため、出版社では出版点数を増やし、売上を確保するケースが多いでしょう。出版点数が増えれば、1タイトルずつの売上が下がっていても、総額では売上を維持できる可能性があります。

 

ただし業界全体の傾向として、紙媒体の市場規模は縮小を続けており、書店数も減少中です。加えて気軽に不要品を販売できるフリマアプリの登場により、安価な中古本がたくさん流通している点も、売上に影響しているでしょう。

 

読書をする層が高齢者に多い傾向からも、将来的な需要の減少につながっていくと予想されます。このような業界構造により生き残りが難しいと判断したなら、事業承継を検討した方がよいでしょう。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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