1.出版業界の動向
書籍や雑誌などの紙媒体は、年を追うごとに売上が減り続けています。児童書の売上に限定するとプラスではありますが、市場全体を牽引するほどの規模ではありません。全体としては縮小傾向が目立ちます。
1-1.紙媒体の市場は縮小傾向
紙媒体の売上は減少を続けています。書籍も減っていますが、特に厳しい状況に置かれているのが雑誌です。雑誌の休刊・廃刊のニュースを聞いたことがある人も少なくないでしょう。
仕入れた書籍や雑誌が売れないときには、書店は取次会社へ返品が可能です。この返品率も高い状態で推移しており、紙媒体の市場規模が縮小している様子がうかがえます。
1-2.児童書の売上はプラス成長
唯一、紙媒体の中で成長しているのは『児童書』です。子どもが読書をする習慣を育む教育政策や、コロナ禍の影響を受けた巣ごもり需要の高まりなどが、成長の要因といわれています。
ただし、市場全体から見ると割合はごくわずかのため、現時点では業界全体の業績回復に結び付くほどの存在にはなっていません。しかし将来性は十分にあり、今後に期待できるジャンルです。
2.新たな戦略が欠かせない
出版社が今後も経営を続けるには、これまでとは異なる戦略が必要です。新しい戦略として『デジタル化』『SNSの活用』『コミックへの注力』の3種類を解説します。
2-1.デジタル化の推進
紙媒体の市場は縮小を続けていますが、その一方で電子書籍事業やWebメディア事業は大きく成長しており、この傾向は今後も続くでしょう。デジタル化の推進は、出版社経営の鍵を握るポイントです。
ただし、単に書籍をデジタルに移行するだけでは不十分です。時代に合ったサービスになるよう、月額定額制のサブスクサービスを提供するといった工夫が必要でしょう。
加えて紙媒体とデジタルの連携も、苦境を脱するために必要なポイントです。
2-2.SNSの有効活用
近年売れている本は、SNSで紹介されているものや、著者がインフルエンサーのものがほとんどです。SNSを活用する場合、ファンやコミュニティ作りがポイントといえます。
既にファンが大勢いるインフルエンサーの著書を出版できれば、大勢のファンが購入するでしょう。また雑誌のコミュニティとしてSNSを運用すれば、ファンの獲得や囲い込みができます。
書籍や雑誌が受け入れられる市場作りの場として活用が可能です。
2-3.コミックへの注力
拡大している電子書籍の中でも、特に好調なのがコミックです。電子書籍市場全体の9割がコミックともいわれています。
大手の中でも特にコミックに強い出版社は、電子書籍で大きな利益を上げているのが現状です。そこでこれまでコミックを扱っていなかった出版社も、専門の部門を作り参入を始めています。
コミックへの注力は、発展し続ける出版社の経営戦略として、重要なポイントといえるでしょう。
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