(※写真はイメージです/PIXTA)

どちらも亡くなる前に残す書状である「遺書」と「遺言書」。自分の死後、遺される家族のことを考えると、遺書ではなく適切な遺言書を作成しておくべきです。では、遺言書とはどのようなものであり、作成するメリットはどのような点にあるのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士がわかりやすく解説します。

遺言書の作り方

(※写真はイメージです/PIXTA)
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遺言書は、どのような流れで作成すればよいのでしょうか? 基本の流れは、次のとおりです。

 

必要書類を収集する

遺言書には、遺産の情報や遺産を渡す相手の情報を、正確に記載しなければなりません。そのため、作成に当たってはまず、資料の収集を行います。収集すべき資料は状況によって異なりますが、次のようなものです。なお、公正証書遺言の場合には、これらの資料を必要に応じて公証役場に提出することとなります。

 

・遺言者の住民票と戸籍謄本

・遺産を渡す相手が相続人などである場合には、相手の戸籍謄本

・遺産を渡す相手が相続人などでない場合には、相手の住民票

・不動産の全部事項証明書(遺言書に不動産について書く場合)

・預貯金通帳(遺言書に預貯金について書く場合)

・証券口座の取引明細書(遺言書に有価証券について書く場合)

・車検証(遺言書に車について書く場合)

・遺言者の印鑑登録証明書(公正証書を作成する場合)

 

その他、遺言書に記す遺産に応じて、その遺産を特定するための資料が必要となります。

 

財産の一覧表を作成する

遺言書の内容を検討するにあたって、財産の一覧表を作成するとよいでしょう。一覧表はどこかに提出するわけではありませんので、どのような様式でも構いません。財産の一覧表を確認することで、誰にどの遺産を渡すのかの検討や、遺留分についての検討などがしやすくなるでしょう。

 

遺言書の方式を検討する

普通方式の遺言書に3つの種類が存在することは、先ほど解説したとおりです。ここで、どの方式で遺言書を作成するのか、検討しましょう。

 

わずかでも争いの可能性がある場合、無効になるリスクを避けたい場合や確実に遺言書の内容を実現してほしい場合などには、公正証書遺言を選択することをおすすめします。一方、相続人間で争いが生じる可能性がなく、かつ費用をかけたくない場合には、自筆証書遺言を選択することになるでしょう。

 

遺言書の内容を検討する

次に、遺言書の内容を検討します。遺言書の内容を検討する際には、遺言者の想いが重要となることはもちろん、遺留分への配慮も必要です。遺留分については、最後に解説します。

 

また、遺言書で実現できない内容を書いてしまわないよう注意しなければなりません。たとえば、「愛犬のハナコに預貯金1,000万円を相続させる」などの遺言は実現不可能であり、無効な内容となります。無効な遺言書を遺してしまえば、のちのトラブルの原因となる可能性があります。

 

遺言書の内容を検討するにあたっては、ほかにも注意すべき点が少なくありません。そのため、遺言書の内容を自分1人で検討することは、容易ではないでしょう。将来に問題を残してしまわないためには、弁護士などの専門家にサポートを受けて作成することをおすすめします。

 

遺言書を作成する

遺言書に記したい内容が決まったら、実際に遺言書を作成します。作成の流れは、それぞれ次のとおりです。

 

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は、自分1人で作成できます。長期の保存に堪えられる紙とペンを用意して書いていきましょう。なお、使用するペンに制限はなく、鉛筆で書いたからといって直ちに無効というわけではないでしょう。ただし、偽造などの疑義が生じる可能性が高いうえ、実際に偽造されるリスクも生じるため、消える筆記具の使用はおすすめできません。

 

公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合には、最寄りの公証役場に事前相談へ出向きます。相談時には、集めた資料のほか、遺言内容のメモを持っていきましょう。なお、相談は予約制となっている場合が多いため、あらかじめ電話などで予約してから出向くとスムーズです。予約時に、必要資料についてもあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

 

事前相談では、希望する遺言書の内容を伝えるとともに、必要書類の提出を行います。公正証書作成時に立ち会ってもらう証人に思い当たる人がいない場合には、公証役場から紹介を受けられますので、紹介を希望する場合には、この時点で相談しておきましょう。なお、紹介を受けた場合には、証人1人あたり5,000円から1万円程度の日当が必要です。

 

その後、公証人が文案を作成してくれますので、文案に問題がなければ本作成日を予約します。予約時に公証役場へ出向いて遺言内容の口授や署名捺印などを行うことで、遺言書の作成が完了します。

 

遺言書保管制度の利用を検討する

自筆証書遺言を作成した場合、遺言書をそのまま自宅などで保管をしては、偽造や変造、紛失などのリスクが残ります。そのため、法務局の保管制度の利用を検討するとよいでしょう。法務局の保管制度とは、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度です。保管申請には予約が必要となりますので、あらかじめ予約のうえ、保管申請書とともに遺言書を持って出向きます

 

※ 法務省:自筆証書遺言保管制度

 

次ページ遺言書を作成する際のポイント

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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