兄にだけ〈生前贈与3,000万円〉、遺言書では思いっきり遺留分を侵害され…親の死から10年後、弟が気づいた「とんでもない事実」【弁護士が解説】

兄にだけ〈生前贈与3,000万円〉、遺言書では思いっきり遺留分を侵害され…親の死から10年後、弟が気づいた「とんでもない事実」【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺留分を侵害する遺言書が遺されていたと、相続トラブルになるケースは少なくありません。相続トラブルで多い「遺留分」ですが、生前贈与も遺留分計算の対象となることをご存じですか。もし、生前贈与があった際、遺留分はどのように計算するのでしょうか? 本記事では、生前贈与がある場合の遺留分について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

遺言書の内容によっては遺留分をめぐりトラブルに…

遺留分とは、亡くなった者(「被相続人」といいます)の配偶者や子どもなど一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。

 

遺留分は遺言書とセットで問題となることが少なくありません。たとえば、相続人が長男と二男の2名であるにもかかわらず、被相続人が「全財産を長男に相続させる」旨の遺言書を遺していた場合などです。このような遺言書でも有効ではあるものの、二男の遺留分を侵害しています。そのため、相続開始後に、二男は長男に対して、侵害された遺留分相当額の金銭を支払うよう請求できます。このような請求を「遺留分侵害額請求」といいます。

 

生前贈与も遺留分の対象になる

しかし、遺留分の対象となる財産は遺言書によって遺贈された財産だけではありません。
被相続人が行った一定の生前贈与も、遺留分計算の対象となります。そのため、実際に遺留分を請求する際は、生前贈与についても調査することをお勧めします。また、生前贈与を受けた側は、生前贈与が遺留分計算の対象となる可能性があることを知ったうえで、遺留分侵害額請求に備えておきましょう。

遺留分の対象となる生前贈与

被相続人が行った生前贈与のすべてが遺留分計算の対象となるわけではありません。では、どのような生前贈与が遺留分計算の対象となるのでしょうか? ここでは、遺留分計算の対象となる生前贈与を解説します。

 

相続人以外の者にした、相続開始前「1年間」の生前贈与

被相続人が相続人ではない者にした生前贈与は、相続開始前1年以内にしたものだけが遺留分計算の対象となります(民法1044条1項)。相続人以外の者とは、たとえば次の人などです。

 

・被相続人の長男が存命である場合の、長男の子ども(被相続人の孫)

・子どもの妻

・被相続人に子どもがいる場合の、被相続人の兄弟姉妹や甥姪

・内縁の配偶者

・友人

 

相続人にした、相続開始前「10年間」の生前贈与

被相続人が相続人に対してした贈与は、相続開始前10年以内にしたものが遺留分の対象となります。相続人に対してした贈与は遺留分の対象となる期間が長いため、注意しなければなりません。なお、相続人となる者は次のとおりです。

 

1.被相続人の法律上の配偶者

2.第1順位の相続人:被相続人の子ども。被相続人以前に死亡するなど相続権を失った子どもがいる場合は、その死亡した子どもの子どもである被相続人の孫

3.第2順位の相続人:被相続人の父母。父母がいずれも死亡している場合は、被相続人の祖父母

4.第3順位の相続人:被相続人の兄弟姉妹。被相続人以前に死亡するなど相続権を失った兄弟姉妹がいる場合は、その死亡した兄弟姉妹の子どもである被相続人の甥姪

 

被相続人に配偶者がいれば、配偶者は常に相続人となるため「ゼロ順位」ともいわれます。第2順位の相続人と第3順位の相続人は、先順位の相続人が1人でもいれば相続人とはなりません。

 

遺留分権利者に損害を与えることを知ったうえで行った生前贈与

被相続人と贈与を受けた者(「受贈者」といいます)の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知って行った生前贈与は、どれだけ前に行ったものであっても遺留分計算の対象となります。なお、損害を与えることを知っていたかどうかは主観的な判断ではなく、状況から見て客観的に判断されます。

 

たとえば、被相続人がすでに年金だけの収入となっており、その後財産が大きく増える見込みがない状態で遺産の大半を贈与したような場合には、遺留分権利者に損害を与えることを知っていたと判断される可能性があるでしょう。そのため、多額の生前贈与をする場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。

 

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