リスケにおける「一番の急所」とは?
銀行から融資を受ける際には、かなりの量の書類に署名・捺印する。様々な条件を細かく決めるので、それを後から変更するのは難しいと思いがちだ。しかし、最近は融資条件の変更はさほど難しくなくなっている。
融資条件の変更は「リスケジュール」、略して「リスケ」と呼ばれ、銀行はあまり抵抗せずに応じてくれる。したがって、すでに借り入れがある場合、新規融資を申し込める銀行を探すより、融資を受けている銀行とリスケの交渉をしたほうが早い。
なぜ銀行はリスケに応じるようになったのか。金融庁の指示により、リスケした会社であっても銀行としては「要注意先」に区分すればよいことになったからだ。「要注意先」であれば、貸倒引当金は融資額の約5%でよい。1億円を貸している会社がリスケをしても、銀行は500万円を経費に計上するだけですむ。9500万円は回収できる見込みとされ、融資体力を左右する自己資本比率への影響も小さいのだ。
リスケでは、毎回の銀行への元本返済を減らす。通常、6カ月間または1年間、元本返済を限りなくゼロにする。例えば、本来の元本返済額に対して5%だけ返せばよいとなれば、95%は返済を待ってもらえ、会社の資金繰りは良くなる。
ただし、金利の支払いまで待ってもらえることはほとんどない。リスケの期間が過ぎたら、原則はいままでと同じ金額の元本返済が始まる。これがリスケにおける一番の急所だ。
絶対やってはいけない「粉飾決算」と「返済の延滞」
業績が悪くなって資金繰りに行き詰まった会社が、6カ月間や1年間で事業を立て直すのは至難の業であろう。ただ、銀行でもそうした事情は分かっているので、リスケの交渉をするとき、事前に10年ぐらい先までの「事業計画書」と「資金繰り表」を作ってしまう。
そのまま認めてくれるかどうかは分からないが、リスケの条件について、最初の事業計画書と、実際の決算書を見比べながら、話し合うきっかけになる。ただし、銀行とリスケを交渉するときにも準備が必要であり、「やってはいけない」ことがある。これを間違えると、リスケできないまま、新規融資を求める時間もないという最悪の事態になる。
「やってはいけないこと」のひとつは、嘘をつくことだ。過去に粉飾決算をしていたのなら、正直にどこが粉飾であったのか洗い出して、正しい決算書に作り直す。リスケの交渉をしているときに、粉飾のある決算書を見せても意味がない。嘘がばれたらそこでリスケの交渉は打ち切りだ。
また、リスケの交渉をする前でも、リスケを認めてもらった後でも、銀行に予告なしで延滞をしてはいけない。突然、返済が滞ってしまうと、信用されないばかりか、資金の管理ができていない会社と判断されてしまう。明確な理由と素早い連絡があれば、銀行も話を聞いてくれるだろう。
一方、リスケを頼んでいる立場だから、銀行側が提示するすべての条件をのまなくてはいけないと勘違いしてはいけない。銀行は融資することがビジネスであり、条件変更を一方的にのむことができないと言っているだけだ。
リスケの交渉が決裂すれば、銀行も困る。粘り強く交渉し、話し合いを続けることで、銀行の要求を抑えるべきだ。