前回は、営業担当者に「黒字化へのシナリオ」を説明する方法について説明しました。今回は、純資産がマイナスでも融資を引き出す「経営改善計画書」の作成法について見ていきます。

「債務超過」や「累積損失」の印象は極めて悪いが…

貸借対照表(BS)の「純資産の部」は、「資産の部」から「負債の部」の金額を差し引
いた残りであり、これがマイナスになっていると債務超過になっていることを意味する。

 

あるいは、「純資産の部」はプラスでも累積損失が計上されていると、資本金が食いつぶされていることになる。担当者の印象はやはり悪い。だが、債務超過や累積損失がある企業であっても、融資を引き出すことが不可能なわけではない。

 

鍵を握るのが「経営改善計画書」である。これは「事業計画書」の一種で、赤字など経営不振に陥っている企業が、例えば、「いったん減資した上で、新たなスポンサーが増資を引き受けてくれる予定だ」「今後は新規事業の黒字が見込まれ、5年後には累積損失を解消できる」といった具合に、いかにして経営改善を実現するかをまとめたものだ。

 

担当者はそのほか、貸借対照表の在庫や売掛金の残高もチェックする。在庫や売掛金を実際より多めに計上し、黒字に見せかける粉飾決算の可能性がないかを確認するためだ。実際、中小企業だけでなく大企業においても、粉飾決算のほとんどは、在庫や売掛金の架空計上によるものである。

銀行の担当者がチェックする借入金の「危険水域」とは?

銀行は、売り上げが横ばいなのに、在庫や売掛金が増加していると間違いなく粉飾を疑い、融資などしてくれない。こういう場合は、「来期の販売に備えて在庫を積み上げた」とか「商品を値上げした分だけ回収サイトを延ばした」といったように、妥当な理由を説明する必要がある。

 

そのほか、銀行の担当者は借入金の残高も必ずチェックする。毎月の売上高の3カ月分までが、適正な借入残高であるとよくいわれる。それが6カ月を超えてくると、銀行は警戒する。

 

ただ、これはあくまで目安であり、製造業なら設備投資が必要なのでもっと多くの借り入れをしていても健全と判断するかもしれない。逆に、薄利多売の卸売業であれば、月商3カ月分の借入金でも危険水域にあるとみなされることもある。

 

特に、借入金が大きい会社がさらに借り入れをする場合は、「資金繰り表」を提出する必要がある。新規借り入れが他の借り入れの返済に充てられるのではなく、運転資金や新規設備に投資され、返済のめども立っていることを丁寧に説明するためだ。

本連載は、2016年3月2日刊行の書籍『赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

久松 潤一

幻冬舎メディアコンサルティング

苦しい経営を続ける中小企業も依然として多い中、企業にトドメを刺すのは資金供給のストップ、すなわち銀行の融資がおりなくなることです。バブル期のように、銀行が「借りてください」と頭を下げるような状況が再び訪れること…

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