工事業者とのトラブルを回避する「2つ」の対策
もし、修繕を依頼していた工事業者がユービーエム株式会社のように破産手続開始の申立てをすることとなった場合、アパートオーナーにはどのような影響があるのでしょうか?
考えられるのは、
・修繕工事請負契約に基づいて支払った「手付金」や「着手金」等の報酬が返金されない
・下請工事会社との紛争が生じる
などといったトラブルに巻き込まれてしまう可能性です。
しかし、ユービーエム株式会社が破産に至った理由がもっぱら社内の問題であることを踏まえると、外部の者がその問題を事前に把握し、修繕の注文(修繕工事請負契約の締結)を回避することは容易ではありません。
では、アパートオーナーとしてはどのような対策を講じればよいのでしょうか。
1.工事業者の「実績」や「経営状況」を確認する
ひとつは、工事業者の実績や経営状況を事前によく確認することです。工事の質が悪ければ、修繕が不十分であるとして、注文者(オーナー側)が債務不履行(契約不適合責任)に基づく「損害賠償請求」や「追完工事の請求」をする必要が出てきてしまいます。
このようなトラブルを抱えている業者は、当然その後注文を受ける機会が減るため、実績が伴わない場合が多いと考えられます。確認した際に実績が芳しくなく、十分な売上もないことが疑われるような場合には、倒産のリスクがあることを念頭において注文するかどうかを決める必要があるでしょう。
なお、工事業者の工事の質は、契約締結前の「見積書」の提示や「事前説明」、「契約書案」からもある程度予測できる場合があります。違和感をおぼえた場合、決断は慎重にすべきです。
また、明らかに経営状況が悪いことがうかがえる工事業者(トラブルや不正が報道された工事業者等)についても、倒産のリスクを念頭におく必要があります。
ユービーエム株式会社も、元幹部による架空取引の件について訴訟提起されていたようですので、この情報を事前に知ることができていれば、被害にあったオーナーも注文を避けることができたかもしれません。
2.契約内容の「精査」と「交渉」
もうひとつの対策は、契約内容を精査し、修正等の交渉をすることです。
たとえば、仮に注文した工事業者が修繕工事の途中で倒産してしまった場合でも、事前に「支払う報酬の金額を低く抑える」とする契約内容にしていれば、返金を受けられなかった場合の損害を抑えることができます。
ユービーエム株式会社も、個人の不動産投資家には工事にあたって着手金の支払いを求めていたという話がありますが、注文者が着手金を減らすなどの交渉を試みていればリスクを低減できた可能性があります。
修繕工事を注文する際には細心の注意を
工事会社との修繕に関するトラブルを事前に防ぐことは容易ではありませんが、修繕工事には相応の費用がかかる以上、注文にあたっては細心の注意を払う必要があります。
ただし、工事業者から提示される契約書案に問題がないか法律を踏まえてチェックし、修正等の交渉をすることは難しい面もあります。必要に応じて、弁護士へのご相談もご検討いただければと存じます。
溝口 矢
弁護士
東京弁護士会/法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス
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