(写真はイメージです/PIXTA)

マンションにおいて、適切な維持・管理のために欠かせない大規模修繕。しかし修繕積立金が不足するケースは多く、問題となっています。なぜ修繕積立金は不足するのか。ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が解説します。

修繕積立金が本当に足りているかの確認が大切

修繕積立金の収支計画は正確に作ることはできないため、普通の人がその費用の妥当性を検証したり、是正したりするのは実際難しい。また、同じ長期修繕計画に基づいた大規模修繕であっても、修繕に必要な費用はその時の経済情勢によって多くも少なくもなる。マンションの売り主が、将来の修繕積立金の足りない分を負担することは無い。マンション購入後に大規模修繕を実施する主体はマンション購入者自身であることは十分認識すべきである。「修繕積立額が不足することは知らなかった」といっても責任を負うのはマンションの区分所有者しかいないのである。

 

しかし、前述のように普通の一般人である区分所有者や管理組合に、不動産や大規模修繕に関する十分な知識がないことは当然と考えられ、何年後かに修繕積立金の不足に気づくという事態も今後増えていくと思われる。大規模修繕が必要な段階になって資金不足で着手できない等の手遅れになる前に、毎月の修繕積立金が本当に足りているのかについて、マンションの購入者は真剣に考える必要がある。

 

具体的には、管理組合等に働きかけて、専門家等を交えながら早期に長期修繕計画や収支計画を検証し、必要に応じて修繕積立金の積立計画を見直すなど、長期に亘って安心してマンションに住めるように手を尽くすべきだと思う。一般の素人にこうしたことを求めるのは現実的にかなり厳しいが、修繕積立金の積立状況の第三者検証は民間の専門家に委託できるほか、各地方自治体でも簡単な相談ができるので、利用するとよい。

 

加えて、長期修繕計画と修繕積立金のガイドラインについて新築マンションにはより厳しい基準を設ける、マンション管理計画認定制度への認定有無や修繕積立金の計算根拠を売り主(または売買の仲介者)が売却の際に説明しなければならない重要事項とするなど、マンション購入者を保護する法整備が必要になってきているのではないだろうか。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年4月5日に公開したレポートを転載したものです。
【参考文献】
1. 総務省統計局. 平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果. https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html (2018).
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3. e-Govポータル. 空家等対策の推進に関する特別措置法.
4. J・ブルーナー & (訳:岡本夏木・仲渡一美・吉村啓子). 意味の復権-フォークサイコロジーに向けて-. (ミネルヴァ書房, 2016).
5. A.J.グレマス & (訳:田島 宏・鳥居 正文). 構造意味論―方法の探求. (紀伊國屋書店, 1988).
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