(写真はイメージです/PIXTA)

マンションにおいて、適切な維持・管理のために欠かせない大規模修繕。しかし修繕積立金が不足するケースは多く、問題となっています。なぜ修繕積立金は不足するのか。ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が解説します。

【関連記事】
マンションと大規模修繕(1)…大規模修繕の概略と長期修繕計画の重要性

修繕積立金とは

修繕積立金とは、「マンションの共用部分について行う将来の大規模修繕*1の費用の額に充てられるために、長期間にわたって計画的に積み立てられる金銭」である。そのマンションの区分所有者全員が、それぞれの持分に応じて毎月積み立てるのが通常である。

 

大規模修繕について、「正しい長期修繕計画に基づいて見積もられた修繕積立金」を払ってさえいれば、何も問題がないと考えている人が多いかもしれない。しかし、築後年数が長くなるにつれて修繕積立金の累計額が大規模修繕工事の費用に足りなくなってしまうことが少なくない(図表1)

 

【図表1】
【図表1】

 

*1:渡邊布味子『マンションと大規模修繕(1)~大規模修繕の概略と長期修繕計画の重要性』(ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート、2023年01月31日)

マンションの使用開始後は区分所有者自身で今後の修繕を考える必要がある

長期修繕計画は、そのマンションの仕様や設備一つ一つの耐用年数を積み重ねたものである。つまり、長期修繕計画では、(1)マンションにある設備などを確認し、(2)それぞれの耐用年数に基づき、(3)耐用年数が到来する前に適切な修理・取替をすることを前提に当該費用を計上する。

 

修繕積立金の額はこの長期修繕計画に基づいて収支計画を組み、積立残高が各回の大規模修繕費に対して不足しないように決定する。ただし、当初の長期修繕計画での収支計画はずっと使えるわけではなく、実際に行った工事の費用等を反映するなど、適宜見直しが必要である。

 

さらに、将来の大規模修繕に関して最も心にとめるべき点として、新築マンションの権利関係から、施工会社(建築会社)は余程の施工ミス等がない限り新築工事が終わったら離脱し、売り主(マンションの事業者)は販売が終わったら離脱することが挙げられる。その後のマンションの権利関係者はマンション購入者である区分所有者と管理会社のみになるが、管理会社は区分所有者からの受託者にすぎない。区分所有者は買った瞬間からマンションの管理を主体的に考えなければならない立場であるが、そのように認識している人はどれだけいるのだろうか(図表2)

 

【図表2】
【図表2】

 

令和4年4月から全国の各市町村(特別区を含む)が順次実施している「マンション管理計画認定制度」*2の登録マンションの公表が全国で35件と増えない理由にも、そもそもマンションの共用部の管理を重視しておらず、登録のメリットを感じない区分所有者が多いことがあるのではないだろうか。

 

*2:認定制度のある市区町村(特別区を含む)にあり、長期修繕計画作成ガイドラインの内容を含む一定の基準を満たすマンションは、「管理計画認定マンション」として公益財団法人マンション管理センターの専用サイトで公表される。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年4月5日に公開したレポートを転載したものです。
【参考文献】
1. 総務省統計局. 平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果. https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html (2018).
2. 趙賢株 & 高田光雄. 住宅購入者の住宅需要特性と既存住宅流通の阻害要因に関する研究-大阪府の住宅購入者を対象とした調査結果を通じて-. 日本建築学会計画系論文集 78, 1817–1825 (2013).
3. e-Govポータル. 空家等対策の推進に関する特別措置法.
4. J・ブルーナー & (訳:岡本夏木・仲渡一美・吉村啓子). 意味の復権-フォークサイコロジーに向けて-. (ミネルヴァ書房, 2016).
5. A.J.グレマス & (訳:田島 宏・鳥居 正文). 構造意味論―方法の探求. (紀伊國屋書店, 1988).
6. Escalas, J. E. Narrative processing: Building consumer connections to brands. Journal of Consumer Psychology 14, 168–180 (2004).

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