(写真はイメージです/PIXTA)

インバウンド復活のなか、不動産投資のなかで有望と考えられるホテル。しかしニッセイ基礎研究所、渡邊布味子氏は「ホテルへの投資は増えにくい」といいます。なぜなのでしょうか。

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ホテルの所有・経営・運営

昨今、内外の投資資金が、国内の様々な不動産に投資されている。なかでもホテルは、投資需要の多い不動産用途の一つだ。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2022年の延べ宿泊者数1は、2019年比で全体が▲23.8%、日本人延べ宿泊者数は▲9.0%まで回復した。外国人延べ宿泊者数は▲85.5%であったが今後は客数の回復が期待できる。ホテルに特化したデータベンダーのSTRによると、全国のRevPER2は既に2019年の水準を超えた。今後もホテルの収益は向上していく見通しである。

 

投資需要の高まりに加え、コロナ禍で大打撃を受けたホテルの売買取引が増えてもおかしくない。実際に、2008年の世界金融危機の後では、数多くのオフィスビルやオフィス開発用地等が投げ売りされていた。しかし、MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスによると、取引単価は変わらないにもかかわらず、国内の不動産売買総額に占めるホテルの売買額の割合は、2019年が10%に対して2021年も2022年も8%と、むしろ減少している。これにはホテル特有の運営形態が関係している。

 

ホテルは所有・経営・運営の状況に応じ、「直営」「賃貸借」「運営委託(マネジメント・コントラクト、MC)」「フランチャイズ(FC)」に大別できる。「直営」は、ホテルの経営会社が土地建物を所有し、自身のブランドで運営する方式である。「賃貸借」とは宿泊施設の経営会社が所有者から土地建物を借りて経営を行う方式である。「運営委託」とは、土地建物の所有者または賃借人が、運営会社に運営を委託する方式である。

 

「フランチャイズ」とは、チェーン展開するビジネスホテルに多く、コンビニエンスストアなどでも用いられている方式である。加入者はブランド使用権と本部からの送客を得られる一方、本部に加盟料などのロイヤリティを支払う必要がある(図表1)。なお、このうち不動産投資と関係が深いのはオーナー以外が運営者となる「賃貸借」と「運営委託」である。

 

【図表1】
【図表1】

 

ホテルの取引額が不動産売買総額に含まれるのは、所有権が移転した場合、すなわち(1)「直営」方式で土地建物を売却した場合か、(2)「賃借権」・(3)「運営委託」・(4)「フランチャイズ」方式でオーナーが土地建物を売却した場合である。しかし、ホテルの収益性改善について主導権を持つのはホテルの経営者であり、経営権を残すとすると、売却による資金調達はオーナーが経営者の場合にしか活用できない。つまり、運営方式の切り替え、委託先や提携先の変更など物件の売却以外の方法が選択されることも多い。例えば、賃貸借でホテルを運営する経営者が、フランチャイズ契約を締結して、別のホテルグループに帰属することである。経営者はロイヤリティを支払う必要があるが、集客力強化により今後の収益性の改善が期待できる。

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年4月5日に公開したレポートを転載したものです。

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