トヨタ、セイコーエプソンも。“強い企業”はみんなやっている、「企業が環境対応せざるをえない」どうしようもない理由【元日経新聞記者が解説】

トヨタ、セイコーエプソンも。“強い企業”はみんなやっている、「企業が環境対応せざるをえない」どうしようもない理由【元日経新聞記者が解説】
東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードでSDGsの情報開示を推進

地球温暖化が世界的に大きな問題になる中で、企業にも環境に配慮した取り組みが求められるようになっています。日本でも、2023年3月期の有価証券報告書からは、サステナビリティ情報の開示が義務になるなど、「企業への環境対応への要求は今後さらに厳しくなる」、と元日本経済新聞記者であるジャーナリストの日高広太郎氏は言います。本記事は、SDGsを実践する企業を支援するWebサービス「coki」からの転載です。

内閣府令も改正、対応できなければ信用失墜も

有価証券報告書ではサステナビリティ情報の開示が義務化へ
有価証券報告書ではサステナビリティ情報の開示が義務化へ

 

「年金基金などの機関投資家がESG(環境・社会・企業統治)の観点を重視するようになり、企業は対応をせざるをえなくなった」。東京証券取引所上場部でコーポレートガバナンス・コードの改訂を担当した信田裕介調査役は、企業の「環境力」強化の重要性を強調する。各国の運用会社などで構成する世界持続的投資連合(GSIA)によると、2020年の世界のESG投資は35.3兆ドルと16年からの4年間で1.5倍に膨らんだ。

 

気候変動が進み、台風や洪水による災害が頻発すれば、例えば「工場の生産停止期間が長期化する」「気候災害関連の訴訟が増える」などのリスクが出てくる。将来的に「炭素税」が導入されれば、二酸化炭素(CO2)排出量が多い企業により多くの税金がかかるという問題もある。大和総研の藤野大輝研究員は「環境対応に消極的な企業は将来のリスクが高いとみなされ、投資家にそっぽを向かれかねない」と話す。

 

コーポレートガバナンス・コードは、金融庁と東証が15年に導入した「上場企業の企業価値向上のための行動指針」のこと。守れない場合、企業はその理由を東証に説明しなければならない。十分に説明できない場合は、「理由の説明義務に違反した」として名前を公表される場合があり、企業側も対応に必死だ。社会的な信用が失墜し、業績や株価に悪影響を及ぼす可能性が高いからだ。

 

21年の同コードの改定では、「サステナビリティを巡る取り組みについての基本的方針の策定」などの項目が盛り込まれた。さらに、気候変動などの環境問題への配慮などについて積極的な対応も求めており、企業は具体的な情報を開示する必要がある。

 

企業にとってもう1つの圧力となりそうなのが、内閣府令の改正だ。事業年度ごとに企業情報を開示する有価証券報告書に、サステナビリティ情報を記載しなければならなくなったためだ。具体的には、環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティなどの情報を掲載する必要がある。一部の企業は気候変動への対応についての情報開示を迫られそうだ。

セイコーエプソンは「カーボンマイナス」

政府や東証の動きを受けて、企業は相次ぎ環境関連の施策を打ち出している。政府は温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を50年に実現することを宣言しているが、日本経済新聞社の22年の「SDGs経営調査」では、カーボンニュートラルを宣言している企業は53.3%に達したという。

 

例えば、トヨタ自動車は2050年までにハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車などを拡充・普及させ、新車の走行時のCO2排出量を10年比で9割減らすことを目指している。味の素は30年までに「50%の環境負荷を削減する」との目標を設定。フードロスやプラスチック廃棄物の削減などを進める。

 

セイコーエプソンは50年に温暖化ガスの排出量を上回る削減効果を実現する「カーボンマイナス」という目標を掲げている。ESGへの取り組みを役員報酬に連動させる取り組みも増えている。世界的にESG投資が急増していることに加え、欧米諸国でESG関連の株主提案が急速に増えていることも背景にある。花王はESGへの取り組みを一般社員のボーナスを含めた賃金に反映する制度を導入している。

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