医療機器の貸し出し制度
筆者はアメリカ中西部に本拠を置くステントやカテーテルといったディスポーサブル(単回使用)の医療機器メーカーの日本法人でサプライチェーン部門に勤めている。勤務先のオフィスの一角に最近、“置きおやつ”のトレイが置かれ始めた。
菓子類やカップ麺などを取った分のお金を集金箱に入れる無人販売システムだ。疲れて糖分を補給したい、もしくは昼食を買いに行く手間が惜しいスタッフたちに重宝されている。
ちゃんと支払いがされているのか、などと余計な心配をしてしまうが、月に数回、補充と集金にやってくる菓子メーカーの担当者からなにも言われないところを見ると問題ないようである。
ふと、カスタマーへの絶対的な信頼に基づくこのビジネスモデルはいつから日本にあるのだろうか、と一般社団法人全国配置薬協会のHPを覗いてみた。
富山十万石の二代目藩主・前田正甫は、質実剛健を尊び自らも、くすりの調合を行うという名君でした。元禄3年(1690年)正甫公が参勤で江戸城に登城したおり、福島の岩代三春城主・秋田河内守が腹痛を起こし、苦しむのを見て、印籠から「反魂丹」を取り出して飲ませたところ、たちまち平癒しました。(中略)
正甫公は、領地から出て全国どこででも商売ができる「他領商売勝手」を発布。同時に富山城下の薬種商・松井屋源右衛門にくすりを調製させ、八重崎屋源六に依頼して諸国を行商させました。
源六は、「用を先に利を後にせよ」という正甫公の精神に従い、良家の子弟の中から身体強健、品行方正な者を選び、各地の大庄屋を巡ってくすりを配置させました。そして、毎年周期的に巡回して未使用の残品を引き取り、新品と置き換え、服用した薬に対してのみ謝礼金を受け取ることにしました。(原文ママ)
江戸時代から300年以上続いていることには驚くが、“お客様の利便性を優先する”と言う精神が現代にまで継承されていることにも感心する。
“置き在庫”ビジネスは、ディスポーサブルの医療機器にもある。病院に在庫して使った分だけ代金をいただくという商習慣だ。手術の症例日にあわせて10日間ほど機器を貸し出して使用された分のみを請求する“短期貸出し“と言う慣習もある。
高い精度で手術を行うためには多種類のサイズの機器を揃えておく必要があるが、そのすべてが常時使用される訳ではないためすべて購入するのは生産性が低い。
このため、購入ではなく貸し出しが必要になる。短期貸し出しは使用できる機器の選択肢の幅を広げる優れたビジネスモデルだが、SDGsという視点になると違った側面が見えてくる。
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