グリーンウォッシュ、過激な抗議活動…課題や矛盾もあらわに
SDGsなど環境問題への対応を巡っては課題も多い。その1つが、実態を伴っていない企業の環境活動だ。例えば、「100%リサイクル可能とする紙製ストローへと切り替えたが、実際には分厚すぎてリサイクルができていなかった」「温暖化ガス排出量が実質ゼロの資源開発プロジェクトを立ち上げたと発表したが、それに応じた投資をしていなかった」といった事例だ。「グリーンウォッシュ」ともいわれる、こうした事例は相次いで発見されている。
一方で一部の環境活動家らの過激な行動も目立つ。昨年は英国の美術館にあるゴッホの「ひまわり」にトマトスープとみられる液体を投げつける事件が起こった。気候変動対策を求める自分たちの主張に注意を引く意図があるようだが、こうした過激な活動は批判を招きこそすれ、共感は得られそうもない。
環境対応への圧力はさらに厳しく、実効性がカギ
とはいえ、このまま環境破壊を放置しても良いと考える人はまれだろう。コーポレートガバナンス・コードの改訂や内閣府令の改正をみれば、企業の環境力強化への社会の圧力が強まっているのは明らかだ。気候変動が進んで自然災害がさらに増えれば、経済への悪影響や社会不安が拡大し、企業が求められる環境対応の水準はさらに厳しくなりそうだ。
東証の信田氏は、企業に求める環境対応の見通しについて「今後は実効性を高めることが課題となる。前進はしても後退することはない」と話す。大和総研の藤野氏は「国際的には企業の環境対応について、さらに厳格な開示の検討が進められている。いずれ日本にも影響が及ぶだろう」と指摘する。経済社会や国際情勢が大きく変容する中、多様化し、厳格化していく「優良企業の条件」。それを満たすための挑戦は、多くの企業にとってまだ始まったばかりだ。
ジャーナリスト、元日本経済新聞記者
日高 広太郎