株主資本はまもなく回復へ転じる
[図表9]は別の試算です。リーマン危機時のROA(総資産利益率)の推移と現在の総資産金額に基づいて、今後の最終利益の推移を計算し、それらによって、株主資本がどの程度、減少しうるのかを試算したものです。
リーマン危機時は、融資の引き当てのみならず、保有有価証券の減損やデリバティブでの損失計上もありましたから、それらを含め、すべて「リーマン危機と同じ」とし、なおかつ、当時と同様に、時間をかけた処理として考慮しています。
すると、時間をかければ、そのあいだに得られる利息収入や利下げよって回復する利ザヤ、景気回復に伴う与信先の収益性・返済能力の向上などによって、株主資本はまもなく回復に転じていくことがわかります。
前回、レイ・ダリオの著書から引用したように、今回も「誰もが順調であるというふりをしつつ、何年もかけて償却していく」ことができるはずです。
そして、利下げで好転する
過去は、景気後退とともに利下げが生じていますが、利下げの主要な背景は、経済の「要」である金融部門を支えるためです。
[図表10]に示すとおり、過去、銀行の株価が低迷するときには、景気後退にもなり、利下げも起きていることがわかります。銀行の株価が低迷するときは、銀行の収益が低迷すると市場が見込んでいるときであり、中央銀行は、金融部門による与信を極力維持するために、利下げを行って、銀行や融資先の収益性回復に努めます。
それは、リーマン危機のときも同様です。
銀行株は長期でアンダーパフォームしていますが、最近の株価低迷もまた、利下げを呼び込むと見られます。
インフレを心配する方も多くおられますが、今後の与信収縮による需要低迷によって、インフレはさしたる懸念材料ではなくなるはずです。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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