1.概観
【株式】
3月の主要国の株式市場は高安まちまちとなりました。米国株式市場は、シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことを受けて、金融システム全体に波及するリスクへの懸念が高まったことから一時急落しましたが、金融当局の迅速な対応により金融不安が和らいだことで買い戻され、小幅高となりました。欧州の株式市場も、スイス金融大手の株価急落で金融不安が高まり、下落しましたが、米株に連れて戻り歩調となりました。日本の株式市場は、欧米の株式市場が下落するなかでも比較的底堅く推移し、月末にかけ上昇して終了しました。中国株式市場では、米欧の金融不安への警戒が嫌気されたものの、経済再開への期待が支えとなり、上海総合指数がほぼ横ばい、香港ハンセン指数は上昇しました。
【債券】
主要国の債券市場は、SVBの経営破綻を契機とした金融不安の高まりで堅調な展開となり、10年国債利回り(長期金利)が大きく低下しました。米国の長期金利は、金融不安に伴い米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止が視野に入りつつあるとの見方から低下しました。ドイツの長期金利も、金融不安に伴う投資家のリスク回避姿勢が強まったことから低下しました。日本の長期金利も、欧米の金利低下に連れて低下しました。
【為替】
円は対米ドルで上昇しました。金融不安の高まりで安全通貨とされる円が買われたほか、米長期金利低下に伴う日米金利差縮小が上昇要因となりました。
【商品】
原油価格は、金融不安に伴い世界景気が減速するとの懸念が高まったことから下落したものの、金融不安が和らいだため値を戻し、小幅安となりました。
2.景気動向
<現状>
米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.7%と、2四半期連続のプラス成長でした。高インフレの下でも個人消費が底堅く推移しました。
欧州(ユーロ圏)の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.9%となりました。インフレの加速や大幅利上げの影響で前期から減速しました。
日本の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.1%でした。マイナス成長だった前期から横ばいで、景気回復力の鈍さが明らかになりました。
中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.9%と、前期から減速しました。ゼロコロナ政策の影響で経済活動が抑制されました。
豪州の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.7%と、前期から減速しました。インフレ上昇の影響で個人消費の伸びが鈍化しました。
<見通し>
米国は、物価高の影響で消費が減速することに加え、FRBによる大幅な利上げと金融不安で信用環境が引き締まり、企業業績が減速することから、23年末にかけ低成長が続くとみられます。ただし、雇用が堅調なことから大幅なマイナス成長とはならず、グロース・リセッション的な状況になるとみています。
欧州は、低成長ながら緩やかな回復を続けるとみています。欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続で23年後半には金融引き締めによる景気抑制効果が強まるものの、労働市場の安定、財政の支援、エネルギー価格を中心としたインフレのピークアウトなどが景気を支えるとみています。
日本は、インバウンド消費の回復、設備投資の増加、経済対策を下支えに緩やかな景気回復が続く見通しです。ただし、23年度後半は欧米を中心とした海外景気の減速により、回復ペースが鈍化するとみています。
中国は、ゼロコロナ政策を終了したことから経済正常化に向けた動きが続くとみられます。政府によれば既に集団免疫が獲得されたとみられるため、今後リベンジ消費が増加することや、政府が景気対策を発動することが見込まれることから、景気は持ち直すとみています。
豪州は、世界経済の減速やインフレによる消費への下押し圧力を受けて成長率が鈍化するものの、緩やかな景気回復の流れが続く見通しです。中国経済の再開や、企業の投資意欲、良好な雇用環境、コロナ下で積み上がった貯蓄が、豪州経済を支えるとみています。