8.まとめ
【債券】
米国の長期金利は、振れを伴いながら緩やかに低下する展開を予想します。底堅い雇用や粘着質のインフレが続くものの、金融不安の高まりで金融環境が引き締まることから、FRBの利上げ停止が視野に入ってきたとみられます。先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれ、緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締め姿勢を続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、新総裁就任後の日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行き上昇する展開を予想しています。
【株式】
S&P500種指数採用企業の22年10-12月期の増益率(純利益ベース)は23年1-3月期の増益率(純利益ベース)は前年同期比▲4.6%、除くエネルギーセクターで同▲6.2%の見通しです(3月24日。リフィニティブ集計)。一方、TOPIX採用企業の22年10-12月期の純利益は前年同期比▲22.9%となりました(3月期決算企業で除く金融、QUICK集計)。続く23年1-3月期は同+32.7%と大きく上昇する見通しです。今後は米国での金融不安の行方、日本のマクロ指標が注目されそうです。米国では金融不安は一旦落ち着きを取り戻しつつありますが、預金の流出懸念が残る米中小銀行が貸出態度を厳しくするとの指摘もあります。年後半にかけて、借入コストの上昇など企業業績に悪影響が及ぶ懸念があり、株価の上値が重くなる可能性があります。一方、日本では1-3月期以降の生産や輸出などマクロ指標が注目されます。日本経済が回復を続けることで年後半に向けて企業業績の回復に対する信頼感が醸成されれば、株価は堅調さを維持すると思われます。
【為替】
円の対米ドルレートは、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみあいながら緩やかに上昇する展開を予想します。FRBの利上げは継続しているものの、先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止が意識され、円が小幅に上昇する展開を予想しています。円の対ユーロレートは、概ねレンジ内でもみ合いながら、緩やかに上昇すると予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が円の買い材料となるとみています。また、円の対豪ドルレートは、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。
【リート】
米国リート市場は、FRBの利上げ打ち止め観測と先行きの景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられます。景気後退懸念が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め姿勢から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2023年3月のマーケットの振り返り【マーケットのプロが解説】』を参照)。