どのように売却するのか
介護事業所を売却するには『マッチング』『バリュエーション』『契約』を行わなければいけません。それぞれどのように実施するのか見ていきましょう。
匿名によるマッチング
マッチングは売り手と買い手を結びつけることです。しかしこの段階ですべての情報を開示すると、M&Aに関する情報が外部に漏れる可能性があります。M&Aに関する情報漏えいはリスクの一つです。介護事業の価値低下や事業所内の混乱が生じたり、金融機関からの資金調達ができなくなったりするかもしれません。
そこでマッチング段階では、売り手は事業所が特定されないよう匿名の『ノンネームシート』を作成し、買い手候補へ情報を提供します。買い手は売り手のノンネームシートを確認し、買収したいと考えた場合に限り、秘密保持契約を結び交渉が始まる流れです。
会社や事業の価値を算定
M&Aを実施するときには、会社や事業の価値を算出する『バリュエーション』が欠かせません。売却価格の基準として、会社や事業の価値を示さなければ、買い手は買収を検討しにくいからです。会社や事業の価値は、規模や利益などで異なります。介護事業のM&Aでよく用いられる計算式は『時価純資産額+営業利益3~5年分』です。
ただし、この金額がそのまま売却価格になるわけではありません。あくまでも基準価格であり、交渉によって実際の成約価格は変わる可能性があります。
双方の合意で契約準備に進む
契約へ進むには、まず売り手・買い手の双方で条件について話し合い、合意を形成します。たとえば『医療機関の継続利用』は、介護事業で設定される特有の条件の一つです。協力関係にある病院や歯科医院などがあり、買い手に引き続き利用してほしいときには、その旨を条件に含め交渉します。合意に至ったら『基本合意契約書』の締結です。
その後、買い手が実施する調査である『デューデリジェンス』をはじめとする契約準備へ進みます。
許認可の引き継ぎ
介護事業を行うには許認可が必要です。許認可の引き継ぎができるかは、M&Aで用いる手法によって異なります。そのため利用する予定の手法では、どのような手続きが必要なのか、確認しなければいけません。許認可の引き継ぎができない場合、買い手は新たに許認可を得る手続きが必要です。
事業譲渡や会社分割は引き継がれない
中小企業のM&Aでよく利用される手法は『株式譲渡』『事業譲渡』『会社分割』の3種類です。株式譲渡は買い手に売り手の株式を売却し、経営権を移行します。株主が変わるのみで、訪問介護・放課後等デイサービス・デイサービス・施設介護など、必要な許認可はそのまま引き継ぎが可能です。
一方、事業譲渡や会社分割でM&Aを実施した場合、許認可が自動的に引き継がれません。介護事業を引き続き行うには手続きが必要です。
行政との折衝がポイントに
介護事業に必要な許認可を得るには、あらかじめ行政に相談しましょう。許認可を得るまでに、市町村との協議に約1カ月、都道府県との事前協議に約1カ月、本申請・市町村への意見照会・現地確認に約2カ月はかかります。
申請してすぐに許認可が下りるものではないため、M&Aを検討している段階で、行政へ相談しておくとスムーズです。M&Aが成功しても、許認可がなければ介護事業を継続できないため、早めの相談がポイントといえます。
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