※画像はイメージです/PIXTA

高齢化に伴う成長産業として注目される介護業界。市場規模は、介護給付・予防給付の介護保険給付費用で10兆円を超えるとされていますが、一方で業績不振から倒産に至る事業者も多く企業買収も活発です。介護業界の現状と企業買収の実態についてみていきます。

介護事業を買収する理由は?

M&Aを実施するなら、買い手を見つけなければいけません。企業はなぜ介護事業の買収を計画するのでしょうか?買い手探しのヒントとなる理由を見ていきます。

新たに利用者を集める必要がない

介護事業は一度参入してしまえば、継続するのは比較的難しくありません。積極的に利用者を集めなくとも、利用を希望する人の方から集まってくる状況だからです。M&Aで介護事業を買収した場合、利用者が既に存在しています。一度利用を開始し信頼関係を築ければ、安心感を求める利用者が他の施設に移る可能性は高くありません。

 

加えて、施設の利用者は年々増加しています。2000年4月時点では52万人ほどだったものが、2019年4月には95万人ほどと約1.8倍の増加です。高齢化が進み続けている中、今後も増加傾向は続くため、利用者は増え続けていくでしょう。介護事業の報酬のほとんどは、国から得る仕組みです。そのため、一般の事業と比較してリスクが低い事業形態であることも魅力といえます。

介護付き有料老人ホームへの参入

2006年に改正された『介護保険法』により、介護付き有料老人ホームは『総量規制』の対象となりました。施設の新規開設には都道府県知事の指定が必要ですが、市町村単位の必要利用定員数を超える場合は指定を拒否できる仕組みです。

 

そのため、介護付き有料老人ホームの新規開設の難易度は高まりました。そこでスピーディーな事業参入を目指し、M&Aによる買収が活用されています。

優秀な従業員の確保

順調に施設を新規開設できたとしても、従業員の確保が課題となります。介護事業に従事する従業員は新規採用が難しく、事業所の88.5%が『採用が困難』と回答している調査もあるほどです。

 

『令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書』によると、従業員が不足していると感じている事業所は60.8%と半数を超えています。有資格者の採用はよりハードルが高く、争奪戦といっても過言ではありません。加えて無事に採用できたとしても、人間関係の悩みによる離職率が高い傾向です。

 

M&Aであれば経験豊富な従業員もそのまま獲得できるため、採用の課題を抱えることなく介護事業を始められます。

同業種、異業種の買収目的の違い

M&Aの目的は、買い手が同業種か異業種かで異なるものです。同業種であれば事業拡大を、異業種であれば自社の事業との相乗効果を期待していると考えられます。

同業種の場合

同業種の買い手であれば、M&Aによって事業拡大を目指しているはずです。M&Aであれば、設備やそこで働く従業員も含め、丸ごと事業所を獲得できます。手間や時間はもちろん、初期の設備投資コストをかけずに事業の拡大が可能です。また事業領域の拡大により、利用者の望むサービスを提供しやすくなるのもメリットといえます。

 

M&Aにより小さな事業所が規模を拡大できれば、スケールメリットを得られ経営が安定します。確かな基盤を築けるため、サービスの質の向上や従業員の処遇改善につながるでしょう。

異業種の場合

介護事業を買収する買い手が異業種なら、期待しているのは『相乗効果』です。相乗効果をうまく発揮できれば、お互いの事業を単純にプラスした以上の成果を得られます。たとえば飲食事業を展開している企業であれば、施設で提供する食事の面で相乗効果を発揮できるかもしれません。警備会社であれば、安心して暮らせる施設作りができるでしょう。

 

IT関連の企業が参入することで、介護事業の効率化が大幅に進む可能性も考えられます。利用者のニーズを満たすサービス提供や効率的な事業運営につながるのが、異業種によるM&Aです。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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