成長が頭打ちのいま…新しい経営哲学が問われている
ここまで述べてきたように、中国企業経営者は自社が社会課題や国家の発展に貢献する「大義名分」を掲げて、消費者や政府の支持を得ながら事業を進めてきた。企業の成長と国家・社会への貢献を両立させることで、社員の求心力を保ち、社会的にも支持を得てきた。「成長」を前提とした「大義名分」であり「共感」だったといえる。
しかし、ネット技術を社会実装し、プラットフォーム・モデルにより「規模の経済」をつくって解決できる「困りごと」(Pain Point)はひと段落している。中国政府がプラットフォーマー規制を強化しているのも、プラットフォームの力を経済成長や課題解決に活用するフェーズはひと段落したという認識が背景にあるだろう。
今後、世界に打ち出せる「成長」に替わる経営哲学を持ち、共感を得られる経営を実行できるか、中国企業も問われるフェーズに入っている。
「中国国内における成長の停滞」…課題は克服できるのか?
中国企業は、現状は引き続き成長のパイを求めて、「ネットとリアルの融合」、「中国の地方都市・農村、海外展開」など新たな市場の開拓に注力をしているように見える。また、中国政府が打ち出す理念や戦略の影響力が大きくなり、個別企業が経営理念によって中国社会・世界で共感を得ていくことが難しくなっているという面もある。
その中、中国企業の経営において、グリーン、持続可能性といった哲学が語られ実行される場面も着実に増えており、貧困対策や安全への取り組みが具体化している。中国政府が「新たな発展理念」の一項目として「緑色(グリーン)」を掲げていることも、企業による地球の持続可能性(サステナビリティ)への取り組みを促すだろう。
中国の権威主義的マネジメントにおいては、リーダー(経営トップ)が方針を決めれば、組織はその方向に向けて大きく舵を切る。中国企業が打ち出してくる戦略を先入観なしに見ていくことが重要である。
※本記事は、岡野寿彦氏の著書『中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ』(日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。
岡野 寿彦
NTTデータ経営研究所グローバルビジネス推進センター
シニアスペシャリスト
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