優秀な中間管理職がおらず、「現場力」が育たない
エリート層(経営トップ+コアメンバー)とその他メンバーの二層化した組織構造の宿命として、日本企業で課長代理・係長、課長、部長が担っている中堅層(中間管理者層)の人材が弱い。
現場業務をリードするべき人材のロイヤリティが日本企業と比べて高くない。これにより、自発的な創意工夫・改善のような「現場力」が育たない、定着しないという「弱さ」がある。
日本企業における「階層別研修」のような、「役職に応じた仕事のスキル」を教育しないことも影響している。管理職に求める定量目標やジョブディスクリプションは定義されるが、「やり方」は個人任せであり、企業として役職者を育てていく取り組みは乏しいのが一般的である。
企業組織の骨格を担う人材の「仕事の型」にバラツキがあることが、組織が硬直化しづらいという効果を生んでいる面はあるものの、継続的なナレッジ蓄積や改善活動は弱い。
また、市場競争力のあるエリート人材は、最先端技術やビジネスモデルには興味があるが、地道・泥臭い生産・サービス提供活動、改善を中間管理者として担うインセンティブが低いことも構造的な要因となっている。
「中堅が伸び悩み、現場力が育たない」…課題は克服できるのか?
「エリートがつくるビジネスモデル、先端デジタル技術」と「一般社員、低賃金労働者の人海戦術」という組み合わせの体制は、一気に事業を立ち上げて規模の経済を働かせるうえでは有効に働き、デジタル中国の急成長の原動力となってきた。
しかし、新興国の特徴である社会実装型のデジタル化が飽和する一方で、デジタル化の対象が企業や社会インフラのミッションクリティカルな業務領域や安全・生命に関わる領域に及び、研究開発の重要性も高まる中で、この二層構造体制(これまでの成長モデル)の限界について危機感を持つ中国企業人は少なくない。
2019年に滴滴出行の副総裁をはじめ15名の幹部が、意見交換を目的にNTTデータを訪れた。滴滴出行からの質問は、「中堅メンバーがロイヤリティを持って改善に取り組む」、「チームでナレッジを共有する」、「顧客志向を組織に根付かせる」ために、どのような取り組みをしているかというものだった。
中国IT企業は、冷静に自己分析をし、インターネット第2ラウンドの競争環境変化に適応しようとアクションをとっていることを実感した。
それでは、中国企業の組織構造や運営は、どのように変化していくのだろうか。権威主義的なマネジメントに基づく二層の組織構造は、中国企業人の思考に組み込まれた「制度」として継続していくと考えられる。
その中で、ファーウェイ、小米、アリババなどデジタル中国を牽引する企業は、トップダウンによる経営に加えて、中間管理職層を育成して現場力を強化するという相矛盾する要素を「両立」させる経営変革に取り組んでいる。
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