「摺り合わせ」のモノづくりが苦手
中国企業は「摺り合わせ」アーキテクチャの製品開発(例:ガソリン車、コピー機、電子部品、素材、製造装置、半導体の微細化)、複数の業務を統合して社会的なシステムとして運用することは、一般に得意ではない。業務知識(特にリアルの業務知識)、技術力を組織能力として蓄積していくことにも課題がある。
自動車産業を例にとると、中国政府は、自動車産業を、国家の基盤を支える重点産業と位置付けて、自国自動車メーカーの実力強化に取り組んできた。1994年に公布した「自動車工業産業政策」では、「外国から技術を吸収して、自主開発力を高める」ことが盛り込まれた。
日本、ドイツ、米国など外国自動車メーカーが中国市場に参入するためには、「第一汽車」、「第二汽車(現在の東風汽車)」、「上海汽車」の3つの大型国有企業など中国政府が指定した中国自動車メーカーとの合弁会社を設立することを求めた。
外資の出資比率は50%以下に制限し、外資企業は中国の自動車メーカーと最大で2社までしか提携できないとした。これにより、中国自動車メーカーが技術を習得する機会をつくったのだ。
2009年には中国は世界最大の自動車市場になった。しかし、開発や生産において緻密な「摺り合わせ」が必要なガソリン車で、中国独自ブランド車は、外国自動車メーカーと伍する競争力を持てていない。
自動車業界の方と話をすると、「細かい部品を丁寧に摺り合わせて安全性や乗り心地をつくり上げていく車の製造は、中国自動車メーカーの組織体質と合っていない」、「中国国内において、日本企業の得意とする強固なサプライヤー・ネットワークが構築できていないが、これも摺り合わせによるモノづくり能力の不足に起因する」との意見で共通している。
「摺り合わせ型のモノづくりが苦手」…課題は克服できるのか?
中国政府は、「摺り合わせ型」の製品開発、マネジメントを自国企業は得意ではないと自己評価を行い、ゲームチェンジを進めている。「水平分業型」、「モジュール型」への産業転換である。EVシフトはその一例である。
また、IoTプラットフォームによるモノづくりなど、自国企業の強みを発揮できる生産モデルを開発して、「摺り合わせ」の弱さを代替しようとしている。「暗黙知」、「匠の技」に依存しないビジネスモデルをつくろうとしているのだ。
しかし、「摺り合わせ」型の製品開発、社会システムづくりの必要性は一定範囲で残り、中国の競争力のボトルネックとなる。
中国政府は、購買力という中国の強みを活かすことで外国企業との補完関係をつくりながら、同時に、時間をかけても自国事業者を育成ようとしている。自国のユーザーとしての力を活かしながら、中国の電子部品などのメーカーは徐々に日本企業にキャッチアップしていくだろう。
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