今回は、メンタルセットを「固定タイプ」から「変動タイプ」に移行する方法を見ていきます。※本連載は、東京大学薬学部卒業で、現在は作家、心理カウンセラー、イラストレーターとして活躍する杉山奈津子氏の著書、『偏差値29からなぜ東大に合格できたのか』の内容の中から一部を抜粋し、子どもの能力を最大限に引き出す親の役割と、短期間で劇的に偏差値を上げる学習法を公開します。

「嫌なこと」に対する受けとめ方で分かる自分のタイプ

メンタルセットが変動タイプと固定タイプ、自分は現在どちら寄りなのかは、嫌なことに対する受けとめ方で見分けることができます。次のように、日常生活の中で起きる些細なことでもいいので一緒に考えてみてください。

 

私は先日、久しぶりにネットオークションを使い、昔から見たかった廃盤のDVDをわりと安い値段で落札しました。そして、ネットから落札代金を直接振り込んだのですが、出品者から別途消費税がかかると伝えられました。久しく活用していなかったので知らなかったのですが、値段の表示の仕方が変わっていたようです。

 

ネットから直接支払う方法は一度しか使えないため、再度振り込むには家から少し遠いコンビニのATMまで行かなくてはならず、出不精な私は気が重くなりました。また、ネットで振り込むのにも手数料はかかりますが、ATMだともっと高い手数料がかかります。しかも振り込む消費税分はたった20円なのに、ATMの手数料が216円ということが、さらに嫌な気持ちに拍車をかけました。

 

「どうして確かめなかったのか」「これでは安く買えた意味がない!」と自責の念にかられ、何だか自分がどうしょうもない人間に思えました。ウジウジしても仕方ないのでさっさとコンビニに行こうと思ったとき、そういえば自転車がパンクしたままだったのを思い出したのです。そのときの気分は最悪で、「こんなことならDVDを買わなければよかった」とさえ思いました。

 

しかし、この一連の出来事は果たしてそんなに悪いものでしょうか? 消費税を見落とした、ただそれだけのミスが「自分はダメ人間」と価値を決めてしまうまでの、人生において大きな失敗なのでしょうか。こうした些細なことにいつまでもひどく落ち込んで、自暴自棄になったり、後々まで文句を言い続けたりするのが固定タイプの特徴です。

 

変動タイプは、落ち込む事態の中でも、前を向いて失敗から成長できる部分を探し出し、サッと気分を切り替えることができます。私は少しふてくされた後、「自分は今、固定タイプ寄りの考え方になっている」と気づきました。そして、メンタルセットを変動タイプに修正するために、プラスになることを考えてみました。

能力を伸ばすことができる人は「切り替え」が上手!?

まず、こうして手聞をかけて払いにいけば、今後は値段の見方に気をつけるようになり、二度と消費税を見落とすことはなくなるでしょう。それに、普段からかなり不健康な生活を送っているので、日の光を浴びてのんびり歩くことはいい運動になります。コンビニの途中に自転車屋さんがあるので、面倒で先延ばしにしていた自転車のパンクもついでに修理することができます。

 

自転車が直れば、これからは遠くまで出かけやすくなります。そして何より、ずっと欲しかったDVDが見つかり、しかも安価で手に入るなんて、何とも幸せなことではないでしょうか。余計な手数料がかかるといっても、わずか200円程度のことなのです。自分にとって最悪なケースは、DVDが手に入らないことです。「買わなければよかった」と結論づけるのは、あまりに一時的な負の感情に振り回されすぎです。

 

目の前の嫌なことにいつまでも焦点をあて、自分自身や行為自体を否定し、ずっと文句を言い続けるのは固定タイプの良くない性質です。変動タイプは、嫌なことがあった場合に人間ですから一度落ち込みはしますが、その後の切り替えが上手です。このDVDの話の中で、私は様々なものを得て前進こそしていても、まったく後退などしていないのです。

 

失敗だと思えるようなことからでも、自分が成長できるものを見つけられる人が変動タイプであり、能力を伸ばすことができる人です。

 

成功者の共通点を書いた『思考は現実化する』の著者ナポレオン・ヒルは、「逆境の中にはすべてそれ相応か、それ以上の大きな利益の種子が含まれている」と言っています。精神的にきつくなったとき、私はいつもこの言葉を思い出すようにしています。

 

おかげで、「この状況の中で、利益の種はいったい何を指すだろう?」と探すクセがつきました。この言葉は、固定タイプに偏りがちな頭を変動タイプに戻すのに、非常に効果があります。

 

まずは自分と、そして子どもの考え方をお互い話し合い、どんなメンタルセットをもっているかを確認してみることから始めてみましょう。

偏差値29からなぜ 東大に合格できたのか

偏差値29からなぜ 東大に合格できたのか

杉山 奈津子

幻冬舎

高校3年生の秋に“偏差値29”だった著者は、一浪の末、見事に東大合格を果たす。なぜどん底の成績でも、「自分は受かる」と信じられたのか。なぜ途中で断念することなく、努力を続けられたのか。本書は、自身と周囲の東大生の…

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