周囲の環境や経験により2つのタイプに偏っていく!?
東京で塾を経営している友人H君の話では、小学校低学年の生徒に難しい問題を解かせ ようとすると、2つのタイプに分かれるのだそうです。間違えて恥をかきたくないために 解くのを嫌がる生徒と、むしろ難しい方が好きだと嬉々として問題を解こうと奮起する生徒です。
前者の子は、もし失敗すると「自分はこの程度のこともできない」と他の人に思われてしまうのが嫌で、難問には挑みたがりません。後者の子は、たとえ問題が解けなくてもそこから何かを学べるだろうと、失敗を恐れず難問にも果敢に挑戦していきます。
人聞はこのように、能力は「生まれつき固定されていて変わらない」というメンタルセットと、「行動でどんどん変動していく」というメンタルセット両方を併せもちますが、周囲の環境や経験により、どちらか一方の要素に偏っていきます。そしてどちらに偏るかで、その後の選択や行動が大きく変わっていくのです。
メンタルセットが「変動タイプ」の人の特徴として、自分の目指すところに到達するのを重要視することが挙げられます。まず目標ありきで、能力が足りないならそこまで自分を高めようと努力します。つまずきは失敗には入らず、むしろ足りない箇所を明確にしてさらに成長するための判断材料となるので、有り難いものと捉えます。
メンタルセットが「固定タイプ」の人は、「自分はこんな能力をもっている」と周りに証明することに心血を注ぎます。大学に落ちることは「この大学に入るまでの能力はない」とはっきりさせてしまうことになるため、合格圏内の範囲で志望校を決め、可能な限り失敗やつまずきを避けます。
子どもの能力を伸ばしたいと願うなら・・・
「変動タイプ」「固定タイプ」の行動が、人生でどんな違いを生むのか。主人公が魔王を 倒しに冒険にいくロールプレイングゲームで例えてみましょう。「魔王を倒す」という壮大な目標を掲げても、最初は布の服に木の棒をもっている程度の貧相な装備しかなく、お金もないので攻撃カの強い剣や、防御カのある鎧は高価で買えません。
そのため、「変動タイプ」はまず弱いモンスターを倒すことにより(たまに負けながらも)、少しずつお金をためていきます。敵を倒していく過程で経験値がたまり、レベルア ップして「素早く動ける」「カが強くなる」など、自分の使える能力が伸びていきます。 そして、お金がたまったら今より上等な武器と防具を買います。こうして、徐々にもう少し強いモンスターが出てくる範囲にも進めるようになり、だんだん手強いボスにも挑めるようになります。
「固定タイプ」は最初の時点で、現状の装備やレベルを上げていこうとは考えません。まず、身につけているものを「これは破れにくい服で鎧よりも軽い」とか、木の棒を「これは剣と同じくらい頑丈で鋭い」と、最大限よく見えるよう町の人に主張するのです。そうして自分をよく見せることばかりに時間を使い、戦おうとしません。
もし弱いモンスターに挑んで負けたことがみんなに知られると、「自分の能力や装備はその程度」と思われて恥ずかしいし、何より自分も「自分は強い」と思い込んでいたいからです。敵を倒さなければ経験値もお金もたまらないので、いつまでたっても当然レベルは上がりません。こんな状態で、魔王を倒すことなど絶対にできないでしょう。
固定タイプと変動タイプ、目標を達成するためにもつべきなのはどちらのメンタルセットかは明らかです。日本には、身長が低くても世界を舞台に活躍するバスケット選手がいます。子どもを育てながら、ワーキングマザーとして宇宙飛行士になった人もいます。
他人から見たら「無理なのでは」と思えることでも、限界を決めずに挑戦し続けたおかげで、夢を実現させている人たちがいるのです。子どもの能力を伸ばしたいと願うなら、まずは親自身が変動タイプのメンタルセットをもつべきです。
そのためにはどうすればいいのかということを、これから詳しく紹介していきたいと思います。