今回は、子どもを「失敗を恐れる固定タイプ」にしてしまう親の行動について見ていきます。※本連載は、東京大学薬学部卒業で、現在は作家、心理カウンセラー、イラストレーターとして活躍する杉山奈津子氏の著書、『偏差値29からなぜ東大に合格できたのか』の内容の中から一部を抜粋し、子どもの能力を最大限に引き出す親の役割と、短期間で劇的に偏差値を上げる学習法を公開します。

「人生がつまらない」と言い放つ小学生

子どもの勉強をすべて学校や塾に任せて、「全然成績が伸びないのはおかしい」と文句
を言う親がいます。そういう親は、子どもの本質的なところまで自分が見えているのかを
疑い、一度きちんと向き合ってみた方がいいと思います。

 

私が大学生時代に、家庭教師のアルバイトをしていたときの話です。ある家庭で小学生の男の子を任され、受験をして開成中学校に入りたいと伝えられました。父親が弁護士なので、その子もゆくゆくは弁護士にしたいとのことでした。まずは、現状を見ることから始めようとその子と話をしたのですが、あまりに毎日勉強でがっちり固められていて、驚きました。

 

彼はお受験で有名な塾に通って弱点を補うために別の塾にも行っていて、さらに私の他にもうひとり家庭教師がついていたのです。親から「勉強しなさい」と言われるレベルではなく、勉強せざるを得ない状態に追い込まれていたのです。「紙で飛行機をつくって立体を考えてみよう」という息抜きになりそうな小学生らしい宿題は、「勉強にあまり関係がないから先生がつくっておいてください」と任されました。

 

彼は小学生にして、「勉強がつまらない」どころか「人生がつまらない」と言っており、ストレスをため込んで、物にあたることもたびたびあったそうです。「友だちと遊ぶのも楽しくない?」と聞くと、「遊ぶ時間がない」という返答。私が彼と同じくらいの頃は、校庭でドッジボールなんかをしていた記憶があり、「人生がつまらない」と思うまで追い詰められた感情をもつことなどありませんでした。

 

彼や、彼の両親にとって成功とは「合格すること」「弁護士になること」であり、それ
以外は失敗なのです。彼は勉強にまったく興味をもてなくなっていたので、これだけ勉強漬けになっていても、基礎から全然できていませんでした。

 

こんな状態で成績を伸ばせるわけがありません。私は途中で引っ越したため、受験までその子を見られませんでしたが、その後人づてに聞いた話では、彼は結局開成には行けなかったそうです。

「落ちるのが怖くて勉強できない」と悩む受験生

こういうタイプの家庭を何度か見たことがあります。「偏差値の高い学校に入ること」「成績を伸ばすこと」に対して、親は過干渉と言えるほど目を光らせています。それなのに、子どもが「勉強ができない自分には価値がない」「能力のない自分には良い点がとれない」と、どんどん固定タイプの殻にこもっていくことに関しては、まるで無頓着で気づかないのです。

 

子どもは、最初のうちこそ親に見捨てられるのを恐れて、勉強をするかもしれません。しかし壁にぶちあたったとき、固定タイプの子はすぐに限界を感じ、無気力になって勉強に手をつけなくなります。親にしてみれば子どものためと思っての行動でしょうが、結果的に伸びていくはずの能カを止めてしまっては本末転倒です。

 

ある学生が手紙で「落ちるのが怖くて勉強できない」と私に相談してきました。親が厳しく、有名大学に行かなければ意味のない人間という目で見るので、落ちたときに見放されてしまうのが切ないのだそうです。そのため、不安が強くて次第に勉強が手につかなくなり、受験に挑戦するのも恐くて逃げたくなる、と。

 

こうした恐怖が勉強する手を止め、能力を伸ばす時聞を潰し、挑戦する意欲の邪魔をしてしまうのです。

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