米利上げ「上方修正の流れ」維持に注目
次にこのような「米金利上昇=米ドル高」シナリオに見落としがないかを考えてみましょう。米金利は2月に入ってから上昇が加速しました(図表4参照)。これは、2月に発表された1月の米経済のデータが予想以上に強い結果となった影響が大きかったと言えます。
そのきっかけになったのが、2月3日に発表された1月雇用統計でした。この中のNFP(非農業部門雇用者数)は、事前予想の前月比19万人程度の増加をはるかに上回る51万人もの大幅増となり、結果的には米金利と米ドルがその後大きく上昇に向かう動きを後押しした形となりました。
その上で、その後発表された1月の米経済データが予想より強い結果が続いたことから、すでに述べたように米利上げ見通しの上方修正となっていきました。
ただこれは、記録的な寒波の影響で経済データが悪化したことの反動が入ったことにより、逆に1月の結果は強く出過ぎた可能性もある、そうであればそれを受けた米金利上昇も逆に行き過ぎかもしれないとの見方が一部にあるようです。
このため、3月に発表される2月のデータを再確認したいとのムードもあります。今週は10日に2月雇用統計の発表が予定されているので、それらの結果を受けて2月以降の米利上げ見通し上方修正の流れが維持されるかはひとつの注目点になるでしょう。
黒田総裁出席の最後の日銀金融政策会合
もうひとつの注目点は、10日に予定されている日銀金融政策決定会合です。この会合は黒田総裁が出席する最後の金融政策を議論する会合になります。
本会合を受けて、仮に日本の金利が大きく上昇に向かうといったことがあれば、すでに述べた米ドル高・円安が続くといったメイン・シナリオは大きく修正を余儀なくされる可能性が出てきます。では、10日の日銀会合は日本の金利にどう影響をおよぼすのでしょうか。
図表5は、日本と米国の10年債利回りを単位は左右軸に分けて重ねたものです。
日銀はほぼ1年前から、10年債利回りの0.25%を上限に設定しましたので、その後から日米の金利はかい離が大きく拡大するところとなりました。ただ、日銀が10年債利回りの上限を決めるまでは、日米の10年債利回りはほぼ重なって推移していました。
これは、基本的に「日本の金利は米金利で決まる」といった状況が続いていたことを示しているでしょう。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻などを受けて、世界的にインフレ懸念が拡大し、米金利も上昇が加速に向かいました。「日本の金利は米金利で決まる」といった状況が続いていたなら、日本の金利も上昇が加速に向かったと考えられます。
以上からすると、日銀が金利の上限を決めたのは、米金利上昇加速との連動を遮断する目的が大きかったのではないでしょうか。