3月10日~3月16日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・イラン攻撃をきっかけに原油価格高騰でインフレ懸念が再燃、また原油等の供給懸念が急拡大した。これらの要因で米ドル高・円安は一時158円台に。
・原油高、日米株価、円安阻止姿勢など注目材料が目白押し。そのなかで円、米ドルともに「暴落リスク」を抱えている可能性がある。
・今週の米ドル/円は155~160円で予想。
先週の振り返り=イラン攻撃きっかけに米ドル高・円安、一時158円台
原油等の供給懸念で「世界一の産油国」米ドル買い拡大
先週は、米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けて、イランがホルムズ海峡封鎖に動いたことから原油やガスの供給懸念が拡大しました。これを受けて、原油等の供給リスクのある円やユーロが売られる一方で、「世界一の産油国」である米国の米ドル、または資源国通貨とされる加ドルや豪ドルが買われる展開となりました。こういったなかで米ドル/円は、一時158円台まで上昇しました(図表1参照)。
この米ドル/円の上昇は、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大にも沿ったものでした。日米の金融政策を反映する2年債利回り差は、1月下旬以来の2.3%以上に拡大し、こういったなかで米ドル/円も、1月23日の日米の通貨当局による円安けん制の「レートチェック」が行われる前に記録した158円台まで上昇するところとなったわけです(図表2参照)。
米ドル高・円安、日米金利差拡大とも連動=ただ米景気回復に足踏みの兆しも
このような日米金利差拡大は、おもに米金利上昇の影響が大きかったようです(図表3参照)。原油価格急騰などによりインフレ懸念が再燃、米利下げ再開観測が後退したことの影響を受けた面が大きかったでしょう。
では米金利上昇などによる日米金利差拡大はまだ続くところとなるのでしょうか。
先週発表された米経済指標は強弱マチマチの結果でした。ただ6日発表の2月雇用統計でNFP(非農業部門雇用者数)が予想外のマイナスとなり、労働市場悪化に改めて注目が集まるところとなりました。こういったなかで、定評のある経済予測モデル、アトランタ連銀のGDPナウが6日に更新した1~3月期の米GDPは、前期比年率で2.1%へ下方修正されました。
以上のように見ると、米景気回復にも足踏みの兆しが出始めたようです。その意味では、インフレ懸念を受けた米金利上昇が、景気回復も反映したものとしてポジティブに評価されるかやや懐疑的な面が出てきたのではないでしょうか。
今週の注目点=原油高、日米株価、円安阻止姿勢など
「世界一の産油国」という米ドルの強み=一方基軸通貨の立場に揺らぎも
為替市場の代表的な投機筋のデータであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、3月3日時点で売り越しが13万枚と、1週間前の19万枚から大きく縮小しました(図表4参照)。
イラン攻撃に伴う原油等の供給懸念急拡大により、供給リスクのある円やユーロの買いリスクの圧縮を急いだ一方で、シェール原油登場以降「世界一の産油国」となった米国の通貨の米ドル買い戻しを急いだ結果と考えられます。このような動きは、原油等の供給懸念があるなかではまだ続く可能性があり、それは米ドル高を後押しすることになるでしょう。
ただ、このイラン攻撃が始まる前、2月末の段階で投機筋の米ドル売り越しは20万枚程度に達するなど、過去の実績を参考にすると「売られすぎ」の状況となっていました(図表5参照)。
これはトランプ大統領の国際秩序を無視したような言動を受けて、それに対する不信感から基軸通貨であるにもかかわらず「米ドル離れ」が続いていることを感じさせるものではないでしょうか。「世界一の産油国」といった強みの一方で、米ドルは基軸通貨の立場が揺るぐといった脆弱性も抱えていることは要注意と言えるのではないでしょうか。
日米「レートチェック」は衆院選挙中の異例!?=円安阻止姿勢変化も
今週は引き続き、イラン情勢やそれを受けた原油価格急騰などが注目されることになるでしょう。またそれを横にらみしながら不安定な動きが目立ってきた日米などの株価動向も注目されます。
米ドル高・円安が、1月23日の日米協調「レートチェック」が実現したとき以来の159円台に達した場合、果たして再び円安けん制が強まるところとなるのか。米ドル/円の160円という水準は、2024年に日本の通貨当局が単独で米ドル売り・円買い介入を開始した水準でした。ただこれの5年MA(移動平均線)かい離率は、2024年当時と足下では大きく異なります(図表6参照)。
米ドル/円の5年MAかい離率を参考にすると、2024年の160円はかなり米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強かったことから、その意味では為替介入によりそれを阻止しやすかったのに対し、足下での「行き過ぎ」懸念はそれほど強いものではないため介入で阻止するのは困難かもしれません。ただ1月23日は、衆院選挙中の「止まらない円安」が高市内閣にとってのマイナス要因となることが懸念されたことから、日米協調という「サプライズ」で円安の反転に成功させたということだったのではないでしょうか。
円、米ドルともに「暴落リスク」=今週の米ドル/円予想は155~160円
以上のように考えると、衆院選挙が終わったことで、円安が160円を目指す動きが再燃した場合でも日本の当局が円安阻止行動に動かない可能性もあるのではないでしょうか。一方で、米当局が実際の米ドル売り介入に動いた場合は、すでに見てきたように「レートチェック」後に米ドル売りが急拡大したことを考えると米ドル売りを加速させるきっかけになる危険もありそうです。
以上のように考えると、円安が160円に接近するようなら、円、米ドルともに「暴落リスク」が顕在化するなどかなり荒れた展開になる可能性があるのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は155~160円のレンジで予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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