米インフレの高止まりリスク…インフレはピークアウトも低下スピードは鈍化傾向、インフレ抑制のためには景気後退不可避の可能性

米インフレの高止まりリスク…インフレはピークアウトも低下スピードは鈍化傾向、インフレ抑制のためには景気後退不可避の可能性
(写真はイメージです/PIXTA)

米国の消費者物価指数は総合指数は低下基調が持続したものの足元で低下スピードが鈍化。今後の米国経済の行方は……ニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏によるレポートです。

【エネルギー・食料品価格】23年は物価上昇圧力の緩和が見込まれる

先ずはエネルギー価格の動向を占う上で重要な需給状況について確認したい。米国エネルギー情報局(EIA)による液体燃料(liquid fuels)*2の世界の需給予測をみると、消費量は主に中国や非OPEC諸国の経済成長によって23年に日量+110バレル、24年には日量+180万バレルの増加が見込まれている。一方、生産量はロシアの石油生産は減少するものの、世界全体では23年が日量+120万バレルの増加、24年も+日量150万バレルの増加と24年にかけて生産量が消費量を上回る状況は続くものの、消費量の増加ペースが生産量の増加ペースを上回ることから、24年にかけて需給はタイトになることが見込まれている(図表4)

 

一方、原油価格見通し(WTI先物)はEIAが足元の1バレル78.1ドルから24年末に69.0ドルへの低下を予想しているものの、当研究所は需給逼迫を背景に24年末に90ドル/バレルへの上昇を予想しているほか、ブルームバーグのコンセンサス予想も原油価格の上昇を見込んでおり、EIAの見通しと乖離している(図表5)

 

もっとも、原油価格の見通しの方向性は異なっているものの、23年通年の予想水準はウクライナ侵攻の影響で高騰した22年平均の95ドルを下回っており、23年は依然高水準ながら22年から原油価格の上昇圧力は緩和されるとの見方に違いはない。

 

【図表4】【図表5】
【図表4】【図表5】

 

次に、食料品価格に関連して世界の穀物*3需給を確認したい。米農務省(USDA)による世界の穀物需給予測は22/23年度(22年9月~23年8月)の消費量が27.6億トン(前年度比▲1.5%)となる一方、生産量は27.3億トン(同▲2.4%)と消費量を下回ることが見込まれている(図表6)。この結果、期末在庫量(7.6億トン)と消費量を比較した期末在庫率は27.5%(同▲0.8%ポイント)と前年度から低下が見込まれており、穀物需給は前年度から逼迫することが見込まれている。

 

一方、USDAが発表するCPIにおける食料品価格予想*4は、23年2月時点で23年が前年比+7.9%(予測レンジ:+5.5%~+10.3%)と22年の+9.9%からは低下するものの、過去20年平均の+2.8%を大幅に上回ることが示されている(図表7)。このため、CPIの食料品価格は22年からは物価上昇圧力が緩和するものの、23年も高止まりとなる可能性があろう。

 

このため、今後のウクライナ侵攻の動向次第で不透明感は強いものの、需給予測などに基づくエネルギーや食料品価格の見通しは依然高水準も22年に比べて物価上昇圧力が緩和する可能性を示している。

 

【図表6】【図表7】
【図表6】【図表7】

 

*2:原油および石油精製製品、天然ガス液体、バイオ燃料、その他の炭化水素源に由来する液体を含むすべての石油。液化天然ガス(LNG)おひび液体水素は含まれない。

*3:穀物は小麦、トウモロコシ、モロコシ、大麦、オート麦、ライ麦、雑穀、精米を含む。

*4:米商務省の経済調査局(ERS)は原材料や流通コストなども加味して毎月、今年の食品価格の年間変化率を予測し、毎月7月から翌年の食品価格を予測。ERSは食品の現在の指数のレベルを分析し、食品のCPIの変化を調査し、食品のCPIの予測を構築。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年2月27日に公開したレポートを転載したものです。

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