成約事例で見る東京都心部のオフィス市場動向(2022年下期)…「オフィス拡張移転DI」の動向 (写真はイメージです/PIXTA)

好調を継続する、東京の不動産市場。オフィス拡張移転DIを業種別・エリア別・ビルクラス別に分析した、ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏によるレポートです。

1―オフィス成約面積は3期連続でコロナ禍前の水準を上回る

三幸エステート株式会社(本社:東京都中央区、取締役社長:武井重夫)と株式会社ニッセイ基礎研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:手島恒明)は、賃貸オフィスの成約事例の各種データを活用し、オフィス市場における企業の移転動向などに関する共同研究を行っている。

 

本稿では、共同研究の一環として算出した「オフィス拡張移転DI」を中心に、2022年下期の東京オフィス市場の動向を概観する。オフィス拡張移転DIは、0%から100%の間で変動し、基準となる50%を上回ると企業の拡張意欲が強いことを表し、50%を下回ると縮小意欲が強いことを示す*1

 

オフィス市況はコロナ禍により調整局面を迎え、2020年第4四半期からの1年間は、オフィス拡張移転DIが51%~53%の水準で低迷した。しかし、2021年第4四半期から緩やかな上昇に転じ、2022年下期は60%台半ばに改善した。以下では、オフィス成約面積の動向を振り返ったのち、オフィス拡張移転DIを業種別・エリア別・ビルクラス別に分析し、企業のオフィス移転動向を確認する。

 

*1:算出方法については、末尾の【参考資料1】「オフィス拡張移転DIについて」を参照。

【図表】オフィス拡張移転DIと空室率の推移(東京都心部
【図表】オフィス拡張移転DIと空室率の推移(東京都心部

 

三幸エステートの公表データ*2によると、2022年下期の東京都心5区におけるオフィス成約面積は約35.3万坪となり、前年同期比+0.9%増加した(図表1)。また、コロナ禍前の2019年同期比では+1.0%増加し、3期連続でコロナ禍前の水準を上回った。

 

成約面積を未竣工ビルと竣工済ビルに分けて見ると、2022年下期は新築オフィスビルの供給が少なかったため、未竣工ビルの成約面積は3.5万坪となり過去平均(8.6万坪)を大きく下回った*3。これに対して、竣工済ビルは31.8万坪となり、過去平均(29.7万坪)を上回る水準で推移している。

 

このように、コロナ禍で一時的に落ち込んだリーシング活動が正常化するなか、東京都心で新築ビルの供給が増加する2023年以降、企業のオフィス拡張意欲がどこまで回復するかが注目される。

 

【図表1】
【図表1】

*2:三幸エステート「オフィスマーケット調査月報」を参照。

*3:過去平均は、2017年から2019年の平均。

 

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    ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

    【職歴】
     2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)入社
     2013年10月 国際石油開発帝石 入社
     2015年9月 ニッセイ基礎研究所 入社
     2019年1月 ラサール不動産投資顧問 入社
     2020年5月 ニッセイ基礎研究所 入社(現職)

    【加入団体等】
     ・(社)不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

    著者紹介

    連載ニッセイ基礎研究所レポート・インサイト

    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年2月21日に公開したレポートを転載したものです。
    ※本稿は三幸エステート「オフィス ユーザー レポート」を加筆・修正の上、転載したものである。

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