仮差押え
仮差押えとは、遺産を使い込んだ人の財産の一部に制約を加える方法です。地方裁判所(請求額が140万円以内は簡易裁判所)に仮差押えを申し立てます。手順は次の通りです。
1.遺産を使い込んだ人が返還に応じないことを確認
2.裁判所へ仮差押えを申し立てる
3.裁判所で審理
4.申立人が担保金(仮差押えをする対象財産の2~3割程度)を用意
5.担保金を供託後、仮差押えの決定
6.仮差押えの執行
申立手続きがスムーズに進めば最短1週間程度で、仮差押えが執行されます。使い込んだ人が財産を処分する前に、迅速な対処を期待できます。
仮差押えの対象は、使い込んだ人が不動産を持っていれば原則不動産(売却等が出来なくなる)を差し押さえます。
不動産を持っていない場合や持っていても明らかにオーバーローンとなっている(不動産価値よりも被担保債権の金額の方が大きい)場合には、預貯金口座等を差し押さえることができます。
不当利得返還請求・損害賠償請求
不当利得返還請求とは、遺産を使い込んだ人に損失を被った人が、本来得るはずだった利益を請求する方法です。
一方、損害賠償請求とは、遺産を使い込んだ人の行為で損害を受けた場合、その賠償を請求する方法です。返還を望む場合には上記のどちらの請求でも可能です。
1.不当利得返還請求または損害賠償請求を地方裁判所(請求額が140万円以内は簡易裁判所)に申し立てる
2.答弁書の提出、争点整理
3.裁判所で審理
4.返還命令または賠償命令へ
ただし、請求可能な期間はそれぞれ異なります。
・不当利得返還請求
→使い込みが2020年4月1日より前であった場合、損失発生から10年で時効
→使い込みが2020年4月1日以降に行われていた場合、損失発生から5年で時効
・損害賠償請求
→損害・使い込んだ人を知ったときから3年で時効
返還請求を行う人は、一般的に時効の長い不当利得返還請求を選ぶ場合が多いといわれています。
相続した遺産が振り込まれない場合の相談先は? トラブルの可能性がある場合は弁護士に相談
相続した遺産が振り込まれない場合、相続人間で話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、解決を目指すことになります。
自分で手続きを行う場合、様々な必要書類・証拠資料の提出、裁判官や調停員との話し合いや調整が必要です。
自分だけでトラブルの解決が難しい場合、弁護士や司法書士の専門家に相談・依頼することが良い方法です。しかし、下記のように、弁護士や司法書士では業務の範囲は異なります。
・弁護士:手続き書類作成・提出代理、調停・審判、返還請求訴訟等全般が可能
・司法書士:手続き書類作成、不動産登記等の提出代理、認定司法書士は訴訟物価格140万円以下なら簡易裁判所で訴訟可能
どんな専門家に相談したらよいかわからない場合は、まず「相続診断士」に相談してみましょう。「相続診断士」は相続全般のアドバイスをしてくれる有資格者で、各ケースを考慮し弁護士や司法書士の専門家への橋渡しも担います。
相続診断士から助言を受けつつ、相続した遺産が振り込まれない場合の対処法を冷静に検討することも可能です。