遺産分割協議書を作成した場合
被相続人が遺言書を作成していない場合、相続人全員で遺産分割方法を協議して決定し、その内容を遺産分割協議書に明記します。
この遺産分割協議書は、被相続人の預貯金の取得、有価証券の現金化、不動産の名義変更手続き等の際の必要書類となります。遺産分割協議書さえ作成できれば、滞りなく手続きは進められることでしょう。しかし、次のケースで遺産の受け取りが遅延する可能性もあります。
・遺産が不動産資産しかなく、代償分割(相続人の1人が遺産を引き継ぐ代わりに、代償金を他の相続人に支払う)をしたが、手続きの遅延が起きた
・遺産分割協議書を作成後、被相続人の新たな遺産が発見された
事前の対策としては代償分割で遺産分割を行う場合、協議書へ遺産を引き継ぐ相続人に「何日までに代償金を用意する」という期限設定を設けておくことが有効です。また、特に不動産に対する代償金の場合は、登記変更の必要書類を渡すのと引き換えに代償金を払ってもらうという形にすることもよくあります。
また、被相続人の新たな遺産が発見されれば、その遺産を誰が引き継ぐかを再び相続人間で協議しなければいけません。その場合に話し合いが紛糾するおそれもあります。
そのため、新たな遺産が発見されたことを想定し「新たに遺産を発見した場合は、相続人〇〇〇が引き継ぐ」もしくは「法定相続分にて各自相続する」と協議書へ記載しておくのも有効な方法です。
遺言執行者がいる場合
遺言執行者とは遺言者(被相続人)に代わり、遺言書にしたがって遺産配分に必要な手続きを取り仕切る人のことです。家庭裁判所によって選任されることもありますが、基本的に遺言書で指定されます。
遺言執行者に資格は不要であり、相続人から信頼のおける人を選んでも構いません。しかし、次のケースでは手続きが進まず、遺産の受け取りが遅延する可能性もあります。
・遺言執行者に指定された人が就任を断った
・遺言執行者を選んだものの、何らかの理由で手続きがなかなか進まない
遺言執行者に指定された人は、就任を断ることも可能です。断られた場合は相続人が家庭裁判所へ選任を申し立てる、もしくは遺言執行者なしで、相続人達で遺産分割を行っていくことになります。
一方、遺言執行者が正当な事由(例:相続手続きに難航している、病気やケガをした等)があり、なかなか執行を行うことが難しい場合、家庭裁判所に解任を請求し、新たに遺言執行者選任の申立てを行う対応も可能です。
特定の相続人が遺産を使い込んでしまった場合の対処法。口座の凍結や取引履歴の確認が有効?
相続開始後の遺産の使い込みを確認する方法は、主に下記の2つがあります。
・被相続人の通帳に記帳する(取引履歴の確認)
・金融機関から取引明細書を発行してもらう
使い込まれるのは現金や預貯金が考えられます。
金額が大きくなるのはやはり預貯金ですので、被相続人が亡くなったら早めに金融機関に死亡の旨を連絡し口座を凍結してもらうのが有効です。
ただし、被相続人と同居していた家族がおり、光熱費等の支払がその口座で行われている場合などもありますので、口座凍結のタイミングについては配慮が必要な場合があります。
相続人が、例えば被相続人の預貯金を口座が凍結される前に使い込んだ、被相続人の現金を使い込んだ等が発覚した場合、他の相続人は返還請求を行うことができます。次のような流れで対処していきましょう。
1.使い込んだ人に返還を求める:返還しなければ裁判や仮差押えで対応することを伝え、自発的な返還を促す
2.使い込んだ人が返還に応じなければ、裁判や仮差押えを実行
ここでは仮差押え、不当利得返還請求・損害賠償請求の方法を解説します。