香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。
2023年最低値に
2023年2月28日 1ドル=136.33
足元の堅調な経済状況を示唆する経済指標が相次いで発表された2月も、月末が近づくにつれ、米FRBによる積極的な利上げ観測が強まり、為替市場では米ドル高の、株式市場では株価に対する逆風が強まった。
債券市場では、最も大きく反応し、10年米国債利回りは4.0%目前まで上昇し、昨年11月以来の高値を付けた。FF金利先物が織り込む、政策金利の最高到達点は「5.25 – 5.50%」へと、現状から75ベーシスポイント高い水準に達したほか、米ドル指数は2ヵ月ぶりの高値を回復するなど、追加利上げへの警戒感は目立つようになった。
S&P500指数は、週足で年初来最大の下げを記録するなど株式市場は、インフレ高進に身構えるようになったといえるだろう。
中国・香港株式市場は、昨年末に大転換したゼロコロナから政策からの転換後、期待感から他市場を大きくアウトパフォームした。しかし2月に入ってからは、期待が剥落し始めて下落トレンドとなり、ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は高値から約16%下落した。ハンセン指数も、2月は月間で10%弱下げて他市場を大きく下回る内容となった。
2月に入って中国の偵察気球に関する問題をきっかけに米中間の緊張が強まった他、3月5日からは全国人民代表大会を控え、内容を見極めたいとする様子見気分の動きも強まっている。
また、1月の企業や国有企業を対象とする製造業、非製造業PMIはそろって大幅な改善がみられたものの、明日に控える2月のPMIでは持続性がみられるかも注視されよう。中国経済に対する悲観的な見方は減速したもの、楽観的な見方へシフトするには時間を要するとみられる。
Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者
国際金融ストラテジスト <在香港>
京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)
シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。
● 個人公式サイト
「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載国際金融ストラテジスト長谷川建一の「香港・中国市場Daily」