会話の雰囲気を温かくする4つの身体的コミュニケーション
①【目を見る】
目を見つめるという行為は簡単なようで意外と難しいものです。見つめられるとなんとなく照れてしまいますし、恥ずかしいという感情が湧いてきます。
しかし、私は目と目が合ったときにこそ、人と人の間に〝線〟がつながると考えます。そして、その〝線〟の上に言葉を乗せることで、相手にきちんと気持ちが伝わると思うのです。
バスケットボールやサッカーなどのチームスポーツでは、アイコンタクトが重要だと言われます。実は、会話の場でもアイコンタクトは大きな意味を持ってきます。
たとえば、「目が泳いでいる」人と話をしていると、聞いている人はなんとなく不安になってくるものです。それではいいコミュニケーションを築くことはできません。
一人一人ときっちり目を合わせるくらいの気持ちで話してこそ、場をつかむ感覚も生まれてきます。
アイコンタクトで線をつくり、対角線を増やしていくことで、その場の空気が温まり、心と心がつながるようになるのです。長く見つめるとかえって気づまりになるので、1、2秒で軽くコンタクトするのがコツです。
②【微笑む】
微笑みは、相手を受け入れているというサインの一つです。コミュニケーションが生まれ、心の内側から微笑みが生まれてくれば、それが相手にも伝わります。
もし、まったく微笑みを浮かべない相手と話していると、「この人は私の話にまったく興味がないのではないか」「ひょっとしたら自分のことを嫌っているのではないか」とだんだん不安になってくるものです。
その結果、こちらに拒絶や嫌悪の気持ちがないにもかかわらず、相手が離れていってしまいます。
自分の話に微笑んでくれる人と、仏頂面をしている人がいたとしたら、誰でも微笑んでくれる人と話していたくなるでしょう。ですから、微笑みはまさにコミュニケーションにおける基本中の基本と言ってもいいほど重要なものなのです。
③【うなずく】
うなずくという行為も、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」というサインです。
その中には「同意・同調する」という意味合いも含まれますが、それは絶対的なものではありません。
仮に相手の意見に同調していない場合でも、「あなたの人格に対して肯定的な姿勢を示しているのですよ」ということ、つまり敵対しているわけではないことを伝える意味合いがあります。
またうなずきには、「相手の言葉を咀嚼して消化している」というイメージを醸し出す効果もあります。それが相手の自分に対する信頼感を生み、もっと近づきたいという気持ちにつながっていきます。
海外では両手や全身を使ったオーバーなアクションでレスポンス(応答)してくる人が少なくありません。それが相手にいい印象を与え、よりコミュニケーションが深まることをよく知っているのでしょう。
それに対し、日本では、頻繁にうなずく人を年寄り臭いと感じる傾向があるようです。それは、日本人全体が、互いに響きにくい身体になっているからかもしれません。残念なことです。
だいたいにおいて、他人に対する関心が低い、いわゆる「自己中」な人間はうなずきが下手です。自分の話ばかりしたがり、相手の言うことを聞こうとしないものです。そればかりか、時には相手の話の腰を折って割り込んでくるので、周囲の人から敬遠されてしまいます。
自分でも気がつかないうちに、そんな行動をとっている人は意外と多いものです。それでは、自分の世界を狭くしていくばかりです。
相手の話をしっかり聞き、コクンとうなずくことは、意識しさえすればそれほど難しいことではありません。ぜひ、うなずきを自分のコミュニケーションに取り入れて、響く身体をつくっていってほしいと思います。
④【相槌を打つ】
これもまた、近年、日本人が急速に失いつつあるコミュニケーション技術の一つと言っていいでしょう。
会話を聞いていると、実に多くの人が、なんとも気の抜けた「あぁ」という返事をしたり、「あっ、そう」などと相手に冷や水を浴びせるような応答をしたりしているのに気がつきます。
自分が一生懸命話しているのにそんな対応をされたら、誰だってその先、話を続ける気持ちなんて消し飛んでしまいます。それでは良好なコミュニケーションなど築けません。
ぜひ、相槌を打つというテクニックを自分のものにしてほしいものです。
相槌を打つときは、「そうそう」「ああ、なるほど」「ほー」「そうなんですか」などと、相手の話に同意する意思を表す言葉を発します。
相槌を打つとき、本当にすべてに対して同意しているわけではありません。にもかかわらず、そうした「合いの手」は、話の流れを良くする潤滑油の役割を果たします。そして、相槌を打ち、こまめに応答することで、自分と相手の間に緊密な糸が織り合わされていくのです。
たとえ短い応答でも、自分が相手に対してどんな距離感を持っているかが伝わるものです。
気の抜けた対応は、相手の心を冷えつかせ、コミュニケーションの質をどんどん劣化させてしまいます。そのことを忘れてはいけません。
明治大学文学部教授
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