(※写真はイメージです/PIXTA)

現代人を取り巻くコミュニケーションは、メディアの発達によりかつてとは比べものにならないほど変化しています。以前より判断を急ぐようになったのです。その結果、「スピード」こそが相手に対する「誠意」になってきていると指摘する、明治大学文学部教授の齋藤孝氏が著書『究極 会話の全技術』(KADOKAWA)から、コミュニケーション力を磨く方法を解説します。

〈現代人に求められるコミュニケーション力〉はかつてないほど高度に

私はよく社会人向けのセミナーや講演会を依頼されますが、最近では、そのテーマとして「コミュニケーション力」を希望されることが非常に多くなっています。

 

その際に事前の打ち合わせをすると、依頼主からしばしば「昔はちゃんとコミュニケーションがとれていた」とか、「きちんと言葉のやりとりができていた」という声を聞きます。そして、「それに比べて今どきのヤツは……」という言葉が続きます。

 

しかし本当に、世の中で嘆かれているほど現代人、とくに現代の若者たちのコミュニケーション力は低くなっているのでしょうか? 私は、それは違うと思っています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

私は、人が変わったわけではなく、社会が変わったのだと考えています。メディアが発達することによって、私たち現代人を取り巻くコミュニケーションの質も量も、かつてとは比べものにならないほど変化し、増加しています。

 

そのなかで、私たちには、以前よりもはるかに高度なコミュニケーション力が求められているのです。

メール、電話、商談…即断・即決を求められる現代人

たとえば、かつては手紙などで比較的ゆっくりとしたスピードで行われていた情報のやりとりが、今ではメールにとって代わられています。一日50通、100通と対処しなければなりません。さらに多くの場合、そのやりとりを瞬時に行うことが求められます。

 

それだけではありません。携帯電話の普及により電話に割く時間も多くなっています。さらには実際に人と会って対話をし、その場で意思決定をしなければならないという状況も増えてきています。

 

それらのすべてを的確にこなしていける人がいったいどれほどいるでしょうか。それらを完璧にこなせる人は、もはや人間ワザではない高度な技術の持ち主と言ってもいいほどかもしれません。

 

しかしその一方で、コミュニケーションの質や量が増大することにより、これまでになかった数々のトラブルが起きるようになっていることも事実です。その結果、実に多くの人々が「コミュニケーションがうまくできない人とは付き合いたくない」「一緒に仕事をしたくない」などと口にするようになっています。

 

つまり、プライベートな人間関係でも仕事でも、たとえ他の能力が高かったとしても、コミュニケーション力の欠如ゆえに不当に低く評価されてしまうことすらあるのです。ここに、現代社会において、より高度なコミュニケーション力が必要とされる最大の要因があるのです。

次ページなにより必要なのは正確さとスピード

※ 本連載は、齋藤孝氏の著書『究極 会話の全技術』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、再構成したものです

究極 会話の全技術

究極 会話の全技術

齋藤 孝

KADOKAWA

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