ニホンザルに学ぶ、争いを避ける社会的コミュニケーション
私たちはコミュニケーションというと、つい言葉だけのやりとりだと思ってしまいがちです。しかし、そもそも人類は言葉を使いはじめるはるか以前から存在し、その間もコミュニケーションを成立させていました。
動物園の猿山を見ていても、実にさまざまなコミュニケーションが行われていることがわかります。
たとえば、彼らはグルーミング(毛づくろい)という行為をします。身体についたゴミや寄生虫を取り除く、つまり衛生的機能というのがグルーミングの第一の機能とされています。しかし、よくよく観察すると、群れが大きくなるにつれて他者に対するグルーミング(社会的グルーミング)の時間が長くなるのだそうです。
なぜ、そんな傾向が表れるのでしょうか。研究者によると、次のような理由によるそうです。
ニホンザルは集団が大きくなると、それだけさまざまなもめごとが起きてきます。それを放置しておくと、大きな争いが起き、仲間どうしで傷つけ合うことにもなりかねません。そうした状況を回避するために、社会的グルーミングが行われているのです。
つまり、グルーミングが群れの中における重要なコミュニケーション手段となっているというわけです。
そういえば、つい最近も、面白い研究結果がニュースになっていました。
ニホンザルは仲間どうしの緊張を和らげるために抱擁(ハグ)という行動をとります。
その仕方を宮城県の金華山島と鹿児島県の屋久島で比べたところ、地域差があることがわかったというのです。
たとえば、身体の向きの違いです。金華山では対面だけですが、屋久島では対面以外から抱き付くこともあるそうです。
まさに文化の違いが存在しているというわけです。
人類にとっても重要な非言語コミュニケーション
ひるがえって私たち人類について考えてみますと、言語という精緻な記号体系を築いて社会を形成しています。しかし、その根底にニホンザルの社会で見られるような身体的コミュニケーションが存在していることは間違いありません。
コミュニケーションを円滑にするために、そうした身体的コミュニケーションが不可欠であることを忘れてはなりません。
私は、その中でも、「目を見る」「微笑む」「うなずく」「相槌を打つ」の4つは、会話の雰囲気を温かくするために不可欠な要素だと考えています。