(※写真はイメージです/PIXTA)

長時間労働が健康に悪影響を与えるのは明らかです。残業や時間外労働が一定量を超えると、血圧や血中脂質、血糖といった定期健康診断の項目で異常が多くなると指摘されています。産業医の富田崇由氏がコストゼロからできる健康経営について解説します。

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毎朝の挨拶だけで職場の健康状況は変化

▶作業管理③挨拶のない職場は、メンタル不調が増えやすい

社員同士のコミュニケーションを良好にすることも、大きい視点でいえば作業管理の一つです。

 

職場のコミュニケーションというと歓送迎会のような酒席や社員旅行、スポーツイベントを想像する人もいるかもしれませんが、私が重視しているのは日頃のコミュニケーション、社員同士が職場で気軽に質問や会話をできる関係かという点です。このような会社の風通しの良し悪しがよくわかるのが職場の挨拶です。

 

挨拶のない職場は全体的にムードが暗いですし、社員同士がお互いの心身の健康の変化にも気づきにくくなり、メンタル不調をはじめとした休業・離職が多くなるように思います。

 

職場のコミュニケーションの状況は産業医である私が職場を訪問したときにもすぐにわかります。コミュニケーションが良好な職場は、私の顔をまだ覚えていないような一般社員の方も通りすがりに「おはようございます」「こんにちは」と気持ちのいい挨拶をしてくれます。

 

私が個別に「今の働き方はどうですか?」といった調査をしているときも、本人の答えに「えー、それって○×さんだからじゃない」などと、周りの社員が突っ込みを入れたりして、普段の人柄や社員同士の人間関係まで伝わってくることがあります。

 

それに対して、挨拶がない職場は私が職場に行くと「誰だ、この人は」という警戒の視線を投げられます。質問をしても周囲に遠慮をしながら言葉を選んで回答をするといった感じで、なかなか心を開いてもらえません。

 

仕事で成果をあげれば、挨拶や余計なコミュニケーションは不要と考える人もいるかもしれませんが、出勤時・退勤時の挨拶やちょっとした会話にも社員の心身の状態が現れています。職場の健康づくりという点では、基本的な挨拶はとても重要になります。

 

IT関連企業や若い人が多い職場だと先に出社して仕事をしている人の邪魔をしないように声を掛けないと考える人も多いようですが、わざわざ仕事の手を止めて、顔を合わせて挨拶をしなくてもいいのです。出社した人が周りに一声掛けてから席につく、という感じでもかまいません。社内でお互いに気軽に声を掛け合える関係をつくっていくことで、職場の健康状況も大きく変わります。

 

▶作業管理④治療中の社員の両立支援は、専門家にも相談

すでに病気があり通院治療などを受けている社員がいる場合、治療と仕事の両立がしやすいように業務内容や業務量の調整が必要になることもあります。

 

近年は「がん」のように深刻な病気でも通院治療を受けながら、仕事を継続できるようになってきています。「平成22年国民生活基礎調査」に基づく推計によれば、仕事をもちながらがんの治療で通院している従業員は32万人に上っています。傷病を理由として1カ月以上連続して休業している従業員のいる企業の割合は、メンタルヘルスによる休業で38%、がんが21%、脳血管疾患が12%となっています。

また「平成25年メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」によると、連続1カ月以上の療養を必要とする従業員が出た場合に「ほとんどが病気休職を申請せずに退職する」「一部に病気休職を申請せず退職する者がいる」と回答した企業はメンタル不調で18%、その他の身体的疾患で15%あります。過去3年間で病気休職制度を新規に利用した従業員のうち、38%が復職せずに退職しています。

 

「治療と職業生活の両立支援対策事業」で傷病を抱える従業員が必要と感じていることを尋ねた設問に対しては、以下のような回答が挙がっていました。

 

・第1位:体調や治療の状況に応じた柔軟な勤務体制(47.8%)
・第2位:治療・通院目的の休暇・休業制度など(45.2%)
・第3位:休暇制度などの社内の制度が利用しやすい風土の醸成(35.0%)
・第4位:働く人に配慮した診療時間の設定や治療方法の情報提供(28.0%)
・第5位:病気の予防や早期発見、重症化予防の推進(26.0%)

 

業務上の労災ではない一般的な病気療養は、社員本人の申し出を受けて、会社が対応を考えるのが基本です。社員が自ら申請しやすいように窓口を明確にしたり、休職や通院のための休暇を取りやすいしくみをつくったりする必要があります。

 

また病気療養と仕事の両立支援では必要に応じて外部資源も利用することができます。

 

がんの治療では各地域のがん拠点病院に両立支援の相談窓口があります。そこで本人に了解を得て職場の担当者が同行し、相談をすることができます。また脳血管疾患や心疾患などでも、主治医や通院先の病院のソーシャルワーカーに相談することもできます。

 

治療中の社員は、本当は薬の副作用などでつらい状態でも、社長や労務担当者が体調を尋ねると、周りに心配を掛けまいと「大丈夫です」と答える傾向があります。外部の専門家に「本人は大丈夫と言っているが、会社として気をつけることはあるか」と相談をしておくのも一案です。

 

本人にも「何かあったらすぐに相談してほしい」と伝え、会社に配慮する意志があることを示しておくとより安心感につながります。

 

富田 崇由

セイルズ産業医事務所

 

 

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※本連載は、富田崇由氏の著書『コストゼロで作る小さな会社の健康な職場』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

富田 崇由

幻冬舎メディアコンサルティング

働く人の健康問題に注目が集まっていますが、組織として健康増進に取り組んでいる企業は多くありません。 「健康経営」や「従業員の健康づくり」は必ずしも産業医がいなければできないものではなく、小さな会社でもコストを掛…

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