米雇用市場・小売売上高も堅調
1月の経済指標で、米雇用市場が引き締まり堅調であることが示された他、小売売上高も予想以上に伸びて消費の堅調ぶりが確認された。
暖冬や1月の大規模な割引プロモーションといった季節要因が、統計をよく見せたとの懐疑的な見方もあったが、今回のPMIでも2月に入ってなお、消費需要がしっかりしていることが示唆されており、米国経済のリセッションシナリオは大きく後退せざるを得ないのではないか。ソフトランディングまたはノーランディングシナリオの可能性が強まりつつある。
そうなると、FRBはインフレを制御するという目標に向けて、より明確な姿勢を取ることも可能となり、想定以上の利上げが実施される可能性もあるだろう。FRBによる0.25%の利上げを3回、政策金利は5.25-5.50%に達し、年内はその水準で維持するというシナリオを織り込みに行く展開を想定しておいたほうが良いだろう。この場合、株価は現水準から10%程度下方向に調整、為替ではドル高基調が継続することになるだろう。
米国債が下落。利回りは2023年最高水準に上昇
21日の米国債券市場では、米国債が下落し、利回りは全ての年限が2023年で最も高い水準まで上昇した。上述のPMI速報値のデータに反応したほか、今週は米国債の新発入札や社債の新規発行が重なっているため、債権の供給圧力が債券価格を押し下げた。
外国為替市場では米国債利回り上昇を受けて、ドルが主要通貨に対して上昇。ドル円は1ドル=135円台にのせ、ユーロドルは1ユーロ=1.07ドル台を割り込んで1.066ドル台をつけた。米国株式市場も幅広いセクターで売られ、主要指数は全て値下がりした。
S&P500指数は、4,000ポイントの大台を割り込み3,997.34で引けた。昨年12月半ば以来の大幅な下げで、今月に入ってからの上昇分を全て失った。ダウ平均も33,129.59まで値を下げた。金利上昇の圧力を受けてテクノロジー銘柄は下げ幅が大きく、ナスダック総合指数は前日比▲294ポイントの11,492.30で引けた。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>