スティーブ・ジョブズの働き方と不思議な共通点
■とにかく働け。がむしゃらに働け!
「アイデアがあればすぐに実行する」というイーロン・マスクの仕事術のベースには、
①機が熟すのを待つのではなく、すぐに動き出すこと
②困難に思えることにも楽観的な姿勢で臨むこと
③成功には失敗がつきものだという、失敗を引き受ける覚悟を持つこと
の3つが必要になる。
しかし、それだけではマスクのような成果を上げるのは難しい。マスクは確かに「アイデアがあればすぐに実行する」人だが、「成功するために無茶苦茶働く」という信念の持ち主でもあるからだ。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズが、マッキントッシュの開発に取り組んでいた頃、チームのメンバーが「週に80時間、90時間働いていた」のはよく知られているが、グーグルの創業者ラリー・ペイジもこんなことを言っている。
「僕たちは本当に一生懸命やってきた。インスピレーションを得るには、たくさんのパースピレーション(汗)が必要である。休日も働き通しだったし、一日中、何時間も働いた。最終的には実を結んだけれど、全く大変だった。やはりすごく努力しなければならなかったからね」
マスクも最初に起業したZip2でよく働いたが、Zip2の次に起業したXドットコムではさらにそれが加速することとなった。「世界初のオンライン銀行をつくる」というあまりに野心的な目標を実現するために、マスクは「48時間ぶっ通しでオフィスに張り付いていた」のだ。当時の社員の1人がこう振り返っている。
「本当に泥臭い人ですよ。私たちが1日に20時間死ぬほど働いたと思ったら、彼は23時間働いているんですから」
しかし、マスクのこうした働き方は今に始まったことではない。学生時代のある友人に、こんなことを言っていた。
「食事を取らなくてもすむ方法があれば、もっと仕事ができる。いちいち食卓につかなくても栄養を摂取できる方法があればいいんだけど」
まるでSF映画に出てきそうな話だが、若い頃からマスクは大好きなことには時間を忘れて没頭し、人の何倍ものスピードで何かを成し遂げるのが大好きだった。
ただ、マスクをよく知る人によると、マスクは早くから「人生は短い」と、悟ったようなことを言っていたという。一方で「世界を救いたい」という強い思いも抱いていた。だから結論は「人生は短い。そう考えたら、懸命に働くしかない」だったのだろう。
2018年夏、マスクはテスラの株式非公開化についてツイッターで宣言したかと思うと、後に撤回するなど、経営者としての資質を疑問視する声が上がっていた。本人も眠れない不安を告白していた。評伝『イーロン・マスク』の著者アシュリー・バンスによると、マスクはストレスで体重の増減が激しく、日々神経をすり減らしていることがわかったという。
なぜそうまでしてマスクは遮二無二働くのだろうか。
「人生は短い。そう考えたら、懸命に働くしかない」というのが、彼の考えのベースにあるからだ。
56歳で亡くなったスティーブ・ジョブズも20代の頃から「この地上で過ごせる時間は限りがあります。僕には若いうちに大事なことをたくさんしておかねばという意識があります」と話していた。マスクも自らが掲げるあまりに壮大なビジョンを実現するために、限りある時間を精一杯使おうと懸命に働き続けているのではなかろうか。
いずれにしても「アイデアがあればすぐに実行する」場合、ある程度の失敗は覚悟したとしても、最終的には「きちんと結果を出す」ことが求められる。もし結果を出すことができなければ、周りの人たちは信用しなくなるし、最終的には「いいアイデアがあるからすぐにやりたい」と言ったとしても、周りがサポートしてくれなくなる。
もちろん難しい挑戦である以上、100%の成功が約束されているわけではないことも確かだ。しかし、少なくとも「アイデアがあればすぐに実行する」人には、「成功に向けて無茶苦茶努力する」姿勢が求められるのも確かだろう。
裏を返せばそこまでやっての失敗だったら、周りも許せるのだ。
マスクはこれまでも素晴らしい成果を上げてきたが、今後の成果を期待する声の方がさらに大きい。それは、マスクが単に壮大なビジョンを掲げるだけでなく、その実現に向かってたくさんの汗をかける人間であることを多くの人が知っているからだ。
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