思わぬ誤算…。『クローズアップ現代』がとらえた、フリーランス転身「宅配ドライバー」の悲惨すぎる末路

思わぬ誤算…。『クローズアップ現代』がとらえた、フリーランス転身「宅配ドライバー」の悲惨すぎる末路
(※写真はイメージです/PIXTA)

内閣官房の「日本経済再生総合事務局」が取りまとめた「フリーランス実態調査結果」から考える、日本のフリーランスの実態。浜矩子氏の著書『人が働くのはお金のためか』(青春出版社)より、一部抜粋して紹介します。

 契約内容がとんでもないことに

その人いわく、「『フリーランス』って光って見えました。『フリー』なので、もっと時間がとれるんじゃないかと」。当初は確かに、サラリーマン時代より早く帰宅できていた。大きな転職動機だった、子どもと過ごす時間を増やすことも実現した。

 

ところが、会社側からの契約内容の変更要請に応じたところから、とんでもないことになった。

 

当初の契約では、月々の報酬は、荷物1個当たりの単価に、運んだ荷物数を掛ける方式で定められていた。それに対して変更後の契約では、報酬が、1日単位の固定額に変わった。そして、割り当てられる配送荷物の個数が激増したのである。

 

こうなれば、何が起こるかは自明だ。日給を確保するためには、いくら時間がかかっても、当日の割り当て荷物数をこなさなければならない。フリーランスだから、働く時間に制約はない。もちろん、残業代も出ない。

 

子どもと過ごす時間を増やすために転職したのに、一緒に住んでいることを忘れるくらいに疎遠になってしまった。家族が過労死を心配する事態になった。

会社側に抗議をすると…

「会社側に抗議は?」という取材者の質問に対して、この哀しき「自由な槍」は、そんなことをしたら、「変な配送エリア」に回されたり、出勤日数を減らされたりしてしまうのだと答えた。

 

こんなことなら、再転職を考えるべきだ。そう言いたくなる。だが、哀しき「自由な槍」は実感している。いったんフリーランスになると、働き方を変えることは難しいのである。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

なぜなら、雇用されている労働者ではないので、原則として失業保険給付が受けられない。だから、今の仕事を辞めてしまえば、転職のための就活中の生活が立ち行かないのである。

 

やっぱり、こういうことなのである。内閣官房調査の結果について私が推察した通り、フリーランサーたちがフリーランサーであり続けることを希望するのは、それを辞めるに辞められないからだった。

 

 

浜 矩子

同志社大学大学院ビジネス研究科教授
エコノミスト

本連載は、浜矩子氏の著書『人が働くのはお金のためか』(青春出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

人が働くのはお金のためか

人が働くのはお金のためか

浜 矩子

青春新書インテリジェンス

富裕層の不労所得が増大と集中をする一方で、経済格差は広がり、「使い捨て型」雇用は増え、働く人々に貧困が忍び寄る。グローバル化の進展とともに富の偏在は進み、「21世紀の資本」は凄まじい規模と速度で国境を越え、広がっ…

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