メディアがとらえた哀しき「自由な槍」たちの実像
内閣官房の「日本経済再生総合事務局」が取りまとめた「フリーランス実態調査結果」の中身からは、調査主体としては、「フリーランス型の生き方は満足度が高く、そこにはこれからもガンガン「自由な槍」として活躍していきたいと考えている21世紀の労働者像がある」、と何としても言いたいという構えが滲み出ている。
これだから、実態調査と称する資料は怖い。調査主体にとって都合の良い結果となるようにしか、問いかけを行わない。一つの調査結果を、別の角度から因数分解するということを試みていない。
これでは、本当のところが解らない。解ったのは、フリーランス化の勧めを大展開したいと考えている人々が、いかに懸命に、その意図に合ったイメージで調査結果をショーアップしようとしているか、ということだった。これはこれで収穫だ。
だが、それだけではいけない。真相究明を目指す名探偵の捜査は、多面的でなければいけない。そこで、ここからはメディアが伝えたフリーランスの働く実態に注目したい。取り上げるのは、NHKテレビの『クローズアップ現代』シリーズの一環として放映された、「自由な仕事というけれどフリーランス急増の裏で」という番組である。
この番組では、まず、日本でフリーランサーが急増していることを報じ、「自由で柔軟な働き方として個人も企業も期待を寄せ、政府も成長戦略の一つに位置づけてきました」と述べる。
その上で、「しかし取材を進めると、転身した人たちが様々な誤算に見舞われ、生活が立ちゆかなくなったり、働く人の尊厳を奪われたりする事態も見えてきました」として、「フリーランスの実態と課題」に焦点を当てた。
番組が進行する中でまず示されたのは、高い専門性を有する人々にとっては、フリーランス化が、働く時間と場所についての自由度の高まりと、収入の増加につながるということだった。
ある健康機器メーカーで商品開発に携わり、会社が提供した正社員からフリーランスへの転身の機会を利用した、技術者の事例が紹介されていた。それに対して、特段の専門性を有していない人がフリーランスに転身し、悲惨な結果に見舞われたケースとして、運送会社と契約を結ぶ宅配ドライバーさんの姿が生々しく描出されていた。