安倍政権の「働き方改革」が目論んだもの
端的に言えば、2012年12月に第二次安倍政権が発足して以来、日本の21世紀の労働者たちは、「下心政治」の餌食となってきた。そうとしか思えない。
そして、これからフォーカスしようとしている3つの労働キーワードにも、この状況が大いに影響を及ぼしているのである。筆者は、故安倍晋三元首相が掲げた「アベノミクス」を「アホノミクス」と名づけ変えた。故人に対して礼を失するかと少々気が引けながらも、この言葉を使わせて頂きたい。お許し頂ければと思う。
安倍氏の後任者、菅義偉前首相の経済運営を「スカノミクス」と命名した。中身スカスカのイメージもあるが、「スカ」には「はずれくじ」の意味もある。こんな「スカ」をつかまされたのでは堪らない。その思いも込めた。
現岸田文雄首相の経済運営は「アホダノミクス」にした。岸田氏が掲げる「成長と分配の好循環」というフレーズが、アホノミクスの丸パクリだからだ。岸田さんは「困った時のアホ頼み」だというイメージも込めた。
スカノミクスもアホダノミクスも、要は、アホノミクスの二番煎じ、三番煎じだ。働く人々との向き合い方も、アホノミクスが敷いたレールの上を今なお滑り続けている。このレールが敷設されたのは、アホノミクスの大将の政権が発足して間もない時のことだった。
「低労働コスト国」追求路線のレール
2013年1月に開幕した通常国会冒頭の施政方針演説において、アホノミクスの大将は、「世界で一番、企業が活躍しやすい国を目指します」と宣言した。企業が活躍しやすい国とは、どんな国か。様々なとらえ方が有り得る。
だが、ことアホノミクスに関して言えば、それは間違いなく「労働コストが低い国」を意味していた。なぜそう考えられるのかをここで立ち入って申し上げていると長くなるので、それは割愛する。ご関心の向きは、恐縮ながら他の拙著でご確認頂ければ幸いだ(『どアホノミクスの断末魔』2017年、『窒息死に向かう日本経済』2018年、いずれも角川新書)。
アホノミクスの大将による「低労働コスト国」追求路線のレール上に、次に出てきたのが、例の「働き方改革」という構想だった。
2018年7月には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(通称「働き方改革関連法」)が公布され、順次施行に入っている(筆者としては「施行に入ってしまった」と言いたいところだ)。