「働き方改革」=「いかに安上がりに労働者を使いまくるか」構想?エコノミストが提言する“政府の野望”

「働き方改革」=「いかに安上がりに労働者を使いまくるか」構想?エコノミストが提言する“政府の野望”
(※写真はイメージです/PIXTA)

貧しい人間と富める人間の差が顕著になった時代、21世紀。これからどのように働いていくべきなのか、人生にどれほどのお金が必要なのか。浜矩子氏の著書『人が働くのはお金のためか』(青春出版社)から、一部抜粋して紹介します。

安倍政権の「働き方改革」が目論んだもの

端的に言えば、2012年12月に第二次安倍政権が発足して以来、日本の21世紀の労働者たちは、「下心政治」の餌食となってきた。そうとしか思えない。

 

そして、これからフォーカスしようとしている3つの労働キーワードにも、この状況が大いに影響を及ぼしているのである。筆者は、故安倍晋三元首相が掲げた「アベノミクス」を「アホノミクス」と名づけ変えた。故人に対して礼を失するかと少々気が引けながらも、この言葉を使わせて頂きたい。お許し頂ければと思う。

 

安倍氏の後任者、菅義偉前首相の経済運営を「スカノミクス」と命名した。中身スカスカのイメージもあるが、「スカ」には「はずれくじ」の意味もある。こんな「スカ」をつかまされたのでは堪らない。その思いも込めた。

 

現岸田文雄首相の経済運営は「アホダノミクス」にした。岸田氏が掲げる「成長と分配の好循環」というフレーズが、アホノミクスの丸パクリだからだ。岸田さんは「困った時のアホ頼み」だというイメージも込めた。

 

スカノミクスもアホダノミクスも、要は、アホノミクスの二番煎じ、三番煎じだ。働く人々との向き合い方も、アホノミクスが敷いたレールの上を今なお滑り続けている。このレールが敷設されたのは、アホノミクスの大将の政権が発足して間もない時のことだった。

「低労働コスト国」追求路線のレール

2013年1月に開幕した通常国会冒頭の施政方針演説において、アホノミクスの大将は、「世界で一番、企業が活躍しやすい国を目指します」と宣言した。企業が活躍しやすい国とは、どんな国か。様々なとらえ方が有り得る。

 

だが、ことアホノミクスに関して言えば、それは間違いなく「労働コストが低い国」を意味していた。なぜそう考えられるのかをここで立ち入って申し上げていると長くなるので、それは割愛する。ご関心の向きは、恐縮ながら他の拙著でご確認頂ければ幸いだ(『どアホノミクスの断末魔』2017年、『窒息死に向かう日本経済』2018年、いずれも角川新書)。

 

アホノミクスの大将による「低労働コスト国」追求路線のレール上に、次に出てきたのが、例の「働き方改革」という構想だった。

 

2018年7月には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(通称「働き方改革関連法」)が公布され、順次施行に入っている(筆者としては「施行に入ってしまった」と言いたいところだ)。

次ページいかに安上がりに、効率的に、労働者たちを使いまくるか。

※本連載は、浜矩子氏の著書『人が働くのはお金のためか』(青春出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

人が働くのはお金のためか

人が働くのはお金のためか

浜 矩子

青春新書インテリジェンス

富裕層の不労所得が増大と集中をする一方で、経済格差は広がり、「使い捨て型」雇用は増え、働く人々に貧困が忍び寄る。グローバル化の進展とともに富の偏在は進み、「21世紀の資本」は凄まじい規模と速度で国境を越え、広がっ…

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