「資金繰りが苦しい」20代・IT企業社長の弱音…ベンチャーがぶつかる“資金調達の壁”【弁護士が解決】

「資金繰りが苦しい」20代・IT企業社長の弱音…ベンチャーがぶつかる“資金調達の壁”【弁護士が解決】
(写真はイメージです/PIXTA)

ベンチャー企業に立ちはだかる「資金調達」の壁。銀行融資や補助金の活用、ベンチャーキャピタルからの出資など方法はさまざまですが、それぞれに注意すべきリスクが存在します。そこで、ベンチャー企業の具体的な資金調達方法とそれぞれのメリット・デメリットについて、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が、20代のIT企業社長Aさんの事例を交えて解説します。

投資家からの出資は「経営権を奪われる」リスク

4.VCからの出資…返済「義務」はないが経営に口出しされる可能性

VC(ベンチャーキャピタル)からの出資による資金調達のメリットは、次のとおりです。

 

・融資ではないため返済の義務がない
・VCによる経営コンサルや取引先の紹介を受けられる場合がある
・第三者の目があることで上場などに向けてより真剣に取り組みやすくなる

 

一方で、デメリットとしては次の点が挙げられます。

 

・株式を保有されるため、経営に口出しされる可能性があり、場合によっては、経営権を奪われることもあり得る
・長期目線での成長よりも短期的な利益が重視される傾向にある

 

VCとのあいだでは、投資契約などの契約書を締結することが必須ですが、この契約内容が非常に重要となります。

 

IPOや、M&Aなどのイグジットに至らなくとも、一定期間経過後に、会社や創業者がVCの保有する株式を買い取る義務を負ったり、イグジットの際に出資者の株式を優先的に売却するという内容であったり等、契約内容をよく確認しておかなければ予期していなかった事態が発生することもあり得ます。

 

5.個人投資家からの出資…返済「義務」はないが“出会い”にハードル

個人投資家からの出資により資金調達をするメリットは次のとおりです。

 

・融資ではないため、返済の義務がない
・個人投資家による経営コンサルや取引先の紹介を受けられる場合がある
・第三者の目があることで上場などにより真剣に取り組みやすくなる

 

一方、デメリットは次のとおりです。

 

・株式を保有されるため、経営に口出しされる可能性があり、場合によっては、経営権を奪われることもあり得る
・応援して出資してくれる個人投資家と出会うことは容易ではない

 

6.クラウドファンディング…販売前にニーズを知れるが「リターン」必須

クラウドファンディング(購入型)での資金調達のメリットには、次のものがあります。

 

・商品販売前にニーズを知ることができる
・スピーディーに資金調達ができる
・想定以上の額が調達できる可能性がある

 

一方、デメリットとして考えられるのは、次のとおりです。

 

・サイトの利用手数料がかかる
・必ず資金調達ができるとは限らない
・リターン(返礼)を提供する必要がある
・不適切な募集などにより、炎上や風評被害が発生する可能性がある

 

◆まとめ

ベンチャー企業が資金調達をするうえではさまざまな選択肢がありますが、それぞれ異なるリスクがあり、慎重な検討が求められます。

 

また、いずれの資金調達方法においても、契約書の締結は必須であり、その契約内容しだいで会社運営に大きな影響を及ぼす可能性も否定できないことから、専門家によるチェックは必須です。

 

資金調達の判断に迷った場合は、1度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士

 

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※守秘義務の観点から、取り上げた事例は実際の相談内容と変更している部分があります。

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