(写真はイメージです/PIXTA)

契約書作成やトラブル対応など、企業内の「要」となる業務を行う「法務部」。法務部員は法律に関連するさまざまな業務を担うことから、法律の素養がまったくない人を採用してしまうと、問題なく実務を任せられるレベルに達するまでに長い期間や教育コストを要する可能性が高いと、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士はいいます。法務部の人材難に悩んでいる経営者に向けて、西尾弁護士が解決策を紹介します。

法務部員に「ふさわしい人材」とは

無資格でも法務部員になれるが…

法務部員になるために、必ずしも法律関係の資格が必要というわけではありません。資格を有していない人を法務部員として配置することは可能です。

 

しかし、次で解説するように、法務部員は法律に関連するさまざまな業務を担います。そのため、法律の素養がまったくない人を採用してしまうと、問題なく実務を任せられるレベルに達するまでに長い期間や教育コストを要する可能性が高いでしょう。

 

したがって、有資格者でなくとも、少なくとも法学部レベルの法律知識を持った人の採用をおすすめします。また、法務部員のうち一定の人数は、法律関係の資格保有者を配置することが望ましいでしょう。

法務部が担う「7つの業務」

企業の法務部が担う役割は、その企業によってさまざまです。他にどのような部門があるのかといったことや、その企業の規模や業種などによって異なるためです。

 

しかし、次の業務などについては、法務部の役割とされていることが多いでしょう。

 

1.契約書のリーガルチェック

企業の法務部のもっとも中心的となる業務の1つが、契約書の作成やリーガルチェックです。自社が顧客と取引する際に使用する契約書を作成して確認するほか、取引先が作成した契約書の原案を確認することもこれに含まれます。

 

取引先が提示した契約書原案に自社にとって見過ごせない不利益があれば、取引先と契約内容について交渉する必要があるでしょう。契約書のリーガルチェックで見落としがあれば、トラブルの原因となる他、トラブルが発生した際に不利となってしまいかねません。

 

また、自社で契約書を作成する際には、消費者契約法などさまざまな法令の要請に沿った内容で作成する必要があります。不備があれば、契約取り消しやトラブル発生の原因となるほか、罰則の対象となる可能性があるためです。

 

契約書のリーガルチェックには注意点が非常に多く、ミスの許されない重要な業務の1つであるといえるでしょう。

 

2.社内規程の整備

定款や個人情報保護規程、秘密保持規程など、社内規程の作成やメンテナンスも法務部が担う重要な役割の1つです。なお、就業規則や退職金規程など、人事に関する規程については別途労務部や人事部などが担う場合もあれば、法務部が担う場合もあります。

 

3.法的手続き

企業には、さまざまな法的手続きが発生します。たとえば、株主総会の開催や役員改選の手続き、企業が取得している許認可上必要となる手続きなどがあります。これらの法的手続きについても、法務部が担うことが多いでしょう。

 

なお、総務部がある場合には、これらのうち一部の手続きを総務部が担う場合もあります。

 

4.法律相談窓口

法務部は、社内からの法律相談の窓口を担います。社外との取引にあたっての相談のほか、経営陣などから新規の取り組みについて法的な観点からの助言を求められる場合もあるでしょう。

 

また、パワハラに関する相談窓口や内部通報窓口など、コンプライアンス系の相談窓口が法務部門内に設置される場合もあります。なお、別途コンプライアンス部がある場合には、コンプライアンス部が担う場合もあります。

 

5.法務研修の実施

法務研修やコンプライアンス研修も、法務部が担う役割の1つです。たとえば、自社に関連する業法が改正された場合において、特に重要な内容を社内に周知する研修などがこれに該当します。

 

他にも、機密情報漏洩の予防研修や、パワハラ防止研修などを行う場合もあります。なお、法務部の他にコンプライアンス部がある場合には、社内研修についてはコンプライアンス部が担うケースが多いでしょう。

 

6.知的財産管理

特許権や商標権、実用新案権など知的財産の管理業務も、法務部が担うことが多いでしょう。新たに特許などを申請する手続きの他、他社の知的財産権を侵害していないかどうかの確認や、自社の知的財産権の侵害が発覚した場合の法的対応などを行います。

 

7.トラブル対応

トラブル発生時の対応も、法務部の重要な役割の1つです。トラブルには、残業代不払いなど社内の労使トラブルもあれば、社外とのトラブルも含まれます。法務部主導で自社のみで解決を図る場合もありますが、訴訟などへ発展する際には、社外の弁護士との連絡窓口となる場合が多いでしょう。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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