初対面の雑談からすでに値踏みは始まっている
銀行に融資の相談に行くと融資担当者が出迎えてくれ、天気の話や景気の話などいろいろな雑談をすると思います。これは場を和ませるためでもありますが、相手の様子を見るための雑談でもあります。
ひと言ふた言会話をすれば経営者がどんな感じの人なのかがある程度分かります。声が大きく活力があるとか、言葉が丁寧で物腰の柔らかい人だとか、あるいは横柄であまり印象が良くないとかです。この第一印象は私の経験上、ある程度の確率で当たります。
最初に人柄の良さそうな人だと思っていると、やはり社員思いの一生懸命な人だと分かってきたり、逆に「何か引っかかるな」と思っていると、自分のペースで物事を進めるタイプでこちらが求める書類をなかなか提出してくれなかったりということがあります。
人柄以外にも、その人の身なりや持ち物などからお金の使い方が把握できます。また決算書をぱらぱらとめくれば経営に対する考え方も見えてきます。このようにして融資担当者は経営者の様子を観察し、「この人は信用できそうか」「この人が経営する会社は支援するに値するか」といったことをうかがっているのです。
銀行が見ているのは「与信」
なんのために人柄や考え方を見ているかというと「与信」を見定めるためです。与信とは文字どおり「信用を与える」という意味です。融資をする場合、お金を先に渡してあとから回収することになります。この取引においてお金を回収するまでの間、相手に信用を与えることから「与信」と呼んでいます。
私が銀行員として新人だった頃、上司からは「ヒト・モノ・カネを見よ」と繰り返し教えられました。この3つをトータルで判断しないと、カネの面だけが良くてもほかがダメだと融資で失敗することがあるという意味です。
まず「この社長にお金を貸してちゃんと返ってくるか」「融資のお金を有効活用してくれるか」「長く付き合っていける相手か」というのがヒトの審査です。
例えば社長がお金や約束にルーズだと返済期限を守らないことが想定されます。会社のお金を自分のお金のように使ってしまう人もいます。また仕事に対する熱意がなければ、今は業績が良くても先々でうまくいかないことが出てくるかもしれません。
次に「事業に強みや将来性があるか」「融資で伸びる可能性があるか」というのがモノの審査です。今は事業が順調でも時代の流れや努力を怠れば下向きになることもあります。融資をすることによってどの程度の効果が生まれるのか、銀行にはどんなメリットがあるのかも大事です。
カネの審査は決算書で行います。決算書には会社の財政や資金繰りなどが全部書かれているので、その内容によって返済能力はかなりの精度で測ることができます。融資担当者は面談が終わったあとに、受け取った決算書とにらめっこして細かい分析をしているのです。
つまり、面談は決算書では分からないヒトとモノの部分を見るためにあるといっても言い過ぎではありません。銀行は面談時にさまざまな角度からチェックを行い、社長や会社の与信を測っているのです。
具体的に銀行員(融資担当者)が何を見て与信の判断をしているかが分かれば、スムーズに面談を進められるはずです。また与信対策のコツや注意点についても押さえておく必要があります。
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