応じない場合は辞任登記手続訴訟を提起
また、子会社の代表に対して辞任届を提出したものの、会社が辞任の効力を否定して辞任登記手続をしてくれない場合、登記簿上は取締役としての登記が残ってしまうことから、前述のとおり、会社法908条1項により善意の第三者に対して責任を負う可能性は残ってしまうことになります。
しかし、判例は、辞任登記未了の元取締役の第三者に対する責任について、不実の登記を残存させることにつき登記申請者に明示的な承諾を与えていた等の場合にのみ責任が認められる(最高裁昭和62年4月16日判決・判例時報1248号127頁)としています。
そこで、親会社の代表の了解が得られず、どうしてもやむを得ないという場合は、特約は無効であるという前提に立って、まず辞任届を子会社の代表に提出します。それと共に、速やかに辞任登記を行うよう請求することで、辞任登記がなされていない状態を承諾しないことをまずは明確に告知し、応じない場合は辞任登記手続訴訟を提起することになると思われます。
なお、辞任届の提出及び辞任登記の請求は内容証明郵便で行うことが望ましいと考えます。