連続赤字で資金が枯渇寸前…。
相談者のなるみさん(仮名)は、個人で整体のお店を営んでいます。以前勤めていた会社で働きながら、個人事業主として自分でもお店をオープンしたのです。
お店を始めて1年半。なるみさんの店舗は未だ黒字にならず、国庫から借りた資金は底をつく寸前。営業していくことにお金がかかりすぎており、今後続けていくことは困難な状況です。
なるみさんは、自己破産も視野に入れています。そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。
(1)患者さんに購入してもらった回数券の残債は返すことができるのか。
(2)会社名義の通帳を個人とは別につくっているが、個人名義の通帳も差し押さえられるのか。
(3)自己破産以外で考えられる清算手段はあるのか。
破産は怖くない!
「破産」、商売人にとっては忌まわしい言葉のようです。
ある企業内で勤務していた弁護士が、自分の机の上に「破産法」の解説書を置いていたところ、上司から「そんな縁起の悪いものを目に付くところに置くな!」と叱られたという話を聞いたことがあります。
しかし、どう考えても経営が上向く見込みがなく、借金が膨らむばかりであれば、破産を視野に入れざるを得ません。返済の目途が立たない借金が膨らむことは、債権者にさらなる迷惑をかけることになり、状況を益々悪化させます。
私も経営が悪化した事業者の方をたくさん見てきましたが、経営が悪化すると、いつしか「自転車操業」、つまり「借りて返す」という状況に陥ります。
そうなると、いわば砂漠に水を撒くようなもので、借金は膨らむ一方です。通常のローン業者等から借りられなくなると、知人や身内から借りるようになり、さらには「ヤミ金」にすら手を出してしまう方もいます。そうなると自分や家族の生活、さらには家族や親族、知人などとの関係も破壊され、再起が困難な状態になってしまうこともあります。そうなる前になすべきことは「破産」です。
破産とは、借金を一旦リセットさせて、債務者に再起のチャンスを与える制度なのですから、債務超過に陥った場合、まず選択肢に挙げられるべき制度なのです。
コロナ禍や物価の高騰などの影響で…
さて、ご質問のケースですが、こういったお話は最近よく聞きます。
商売には経営努力や才覚、起業前の市場のニーズ調査や本拠地を置く場所選び等の緻密なリサーチを要します。しかしながら、この数年来のコロナ禍や物価の高騰、さらには予期せぬアクシデントなど、自分ではどうすることもできない外部的な要因により商売が立ちいかなくなってしまうことも多いようです。
今後の展開を予想し、どう頑張っても負債が増えるようであれば、破産を検討することになるでしょう。
破産における大原則に「債権者平等」というものがあります。
抵当権者など他に優先する権利を有する債権者などは別として、全ての債権者は平等に扱う必要があり、特定の債権者にだけ返済を継続するということは許されません。この点はあまり意識されていない方も多く、身内など近しい債権者にだけ返済する、あるいは強硬に返済を迫る「声の大きい」債権者にだけ返済するということが多くみられます。
しかし、このような行為は、破産法上「偏波弁済」(へんぱべんさい)といって、後に管財人が就いた場合に「否認」といって効力を否定されて元に戻すように要求されることがあります。